(福岡文化連盟機関誌 文化 第128号より抜粋) |
平成十年度の第29回九州芸術祭文学賞(文化庁後援、財団法人九州文化協会と九州各県、福岡、北九州両政令市、両市教育委員会の主催)の地区優秀作と次席各十編が決まった。
最終選考会は来年一月十八日、東京で開き、最優秀作を選ぶ。最優秀作は「文學界」(文芸春秋社)四月号に転載される。 以下長崎県地区から抜粋 長崎県
「死ぬまでの暇潰し」(白石昇)の流暢な語り手は韓国人の老女。長年努力を重ねてコンピューターのプログラマーになったが、かつて日本軍慰安婦として過ごしたタイに来て、手首を切り自殺を図る。行きずりの日本人青年の輸血に命を救はれ、連れ立ってバンコクに戻り、日本人、ニュージーランド人、韓国人など若い男女のひしめく町で、若者の猥雑な生気に触発され、過去の軛を脱して生きる力を恢復する。なかなかの道具立を軽快にこなして、過剰に深刻にならなかったのはいい。題名に掲げた老女の感懐が致命的に軽かった。 |
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