藝道日記。(平成 12/06/01)
平成十二年六月一日(木)。


  市場に行ったんですよ、いつも通り。そしたら鶏の足、骨取ったヤツ売ってて、キロ三十五バーツだったんです。でも一キロ買っていっても冷蔵庫ないし、食いきれないから、五バーツ分売ってくれませんか、って言ったんですよ。

 そしたらおばちゃんが、このケチ、そんなの売れる筈ないじゃないっ、っておっしゃるんですよ。そして、こともあろうに大声で市場中に、みんな聞いてよこのケチねえ、とふれ回るんですよ。

 私は顔から火が出そうなくらいの羞恥を自覚しそしてあまりに執拗であからさまなおばちゃんの流布に対して瞬時にその羞恥が怒りに変わったために、近くの銀行のATMでまとまった金下ろして友達にパーティやるからと電話をかけまくり、鶏屋の横の豚屋で肉十キロと、向かいの八百屋で野菜山ほど買って、たかだか日本円にして六千円くらいのジャパンマネーを大量投下し、鶏屋だけ孤立させてやろうかと思ったんですよ。
 


 がしかし、ケチ、と言われるよりそんなことする方がみっともないと思ったので大人しく市場の皆様のケチビームを浴びながら卵十個だけ買って帰りました。食べ物を残して腐らせたくない、という意識が肉化している私は確かに市場のおばさんから見ればケチでしかありません。

 もう鶏肉なんて食べないからいいもん。
 


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