市場を出ると思わずいつものように鶏卵が十個入ったビニール袋を口にくわえましたがよくよく考えると今日はそんなことをする必要がないのです入院中なのですから港町十四番地号は。
すがすがしい気持ちで歩いて運河の橋を渡り、ジャングル高床式集落に入りました。そしてそこでいい匂いを発てていたのがシュークリーム。
当然一個だけ購入してすかさず食いましたが、そのノスタルジックな風味がたまらないのですそれは本当に。
引き続き集落の中をガンガン歩いてゆくとじきに歩くこと自体にハマってしまい、気がついたらわたくしは木炭購入を忘却したままアパートメントに到着。
しばらくわたくしは入口の総菜屋さんのトレーを眺めました。ここのねえさんは敬虔な回教徒で、当然豚料理は商いません。当然最近、わたくしが可愛がっていただいてる一階のミニマート出来た為、著しく売り上げに支障が出ているようで少し真剣ピリピリの模様。
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そういった背景とは関係なく美味そうだったのでわたくしは水牛し、グリーンカレーを一袋購入。
そうして部屋に戻るとじきに電話がかかってきました。受話器を取ると管理人室にいるわたくしの泰語朗読師匠である管理人一家次女女子高生の声です。やあおはようございます。どうしたんですか先生? そんなわたくしの挨拶を黙殺する形で朗読師匠は、人が会いに来ています、と事務的におっしゃいます。わたくしは、すぐに降りてゆきますですはい、と言って受話器を置き、急いで裸族状態の身体に纏ったのです浴衣を。
部屋を出て階段を降りながら、どう考えてもこの時間帯にノンアポで来るのは身元保証人の工場で働く伝令嬢様だよなあ、と思いました。そしてそういう場合その伝令嬢様は身元保証人に書かれた日本語の手紙を持っているのです。わたくしはもしかしたら浴衣問題が彼の中で止めようもない憤怒にまでなり、絶縁状が運ばれてきたのかな、と思いました。彼の希望に逆らい浴衣を着てこの街をうろつくわたくしはいつ絶縁されてもおかしくはありません。そして降りていったわたくしに伝令様から渡されたのは予想通り日本語の手紙。
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