よいこの読書日記−平成11年2月


読んだ本

02/01 オールスパイス 25          オールスパイス
02/05 どんなに上手に隠れても        岡嶋二人     講談社文庫
02/05 エクスプレス タイ語         水野潔・上田玲子  白水社
02/08 盗賊                三島由紀夫      新潮文庫
02/10 鬼                 西村寿行     光文社文庫
02/11 神の火(上)            高村薫      新潮文庫
02/17 R62号の発明・鉛の卵       安部公房     新潮文庫
02/20 探究T               柄谷行人     講談社学術文庫
02/22 神の火(下)            高村薫      新潮文庫
02/26 愛の重荷              源氏鶏太     集英社文庫

今月の順位


02/01 オールスパイス 25          オールスパイス
      今回は『明日見る夢』、『わたしを愛する音楽』、『Final Water』の三つが良かった。随筆では『男の危機』、非常に味があって楽しめた。

02/05 どんなに上手に隠れても        岡嶋二人     講談社文庫
     トリックは素晴らしく、すごく納得できるものでした。しかし、この作品を何年かあとにまた読みたくなるかどうかという問題はまた別です。どうして推理小説というものは肉欲に任せて女や男を買ったときのようなむなしい読後感を感じるのだろうとつくづく思いました。


02/05 エクスプレス タイ語         水野潔・上田玲子  白水社
     6回目。ほぼ半年のブランクを経ておさらいしてみました。練習問題の正解率は83パーセント。危ないところでしたが、かろうじて能力の後退は避けられたようでした。しかし戻ってきて二週間経ちますがしゃべりの方はかなりやばいようです。


02/08 盗賊                三島由紀夫      新潮文庫
     三島の初めての長編らしいのですが、あまりツボに入りませんでした。それはきっと後々の『憂国』を読んでいるせいもあったからでしょう。
     しかし、いまだに三島が売れ続けているというのはこの作品のようにある種やんごとなき方々のお話を求める読者が多数いるという事なのだろうな、とつくづく思いました。

02/10 鬼                 西村寿行     光文社文庫
     そして寿行です。寿行はいつものように何かを期待させて、その期待にちゃんと答えてはくれるのですが、この作品は期待に答えすぎて期待はずれでした。


02/11 神の火(上)            高村薫      新潮文庫
     UNIXについての記述はLinuxを導入し損ねている私にとってとても痛いものでした。高村薫という方がこのようにUNIXコンソールをバリバリに使いこなす方なのであればとてもすごいとおもいます。加えて以前OL時代に関わっていた原子力発電所関係の作品であり、ツボに入らないはずはないと思うのですが、なぜか文章のリズムに乗ることができず、途中までツボに入りませんでした。
     この作品で何よりもツボに入ったのは西成の労働者に関するところでした。ホラあたし、去年まで工場労働者だったから。


02/17 R62号の発明・鉛の卵       安部公房     新潮文庫
      安部公房はちょっと違う。どう違うかといわれれば困るのだが、少なくとも西欧人の安部公房好きの話を聞いてもお互いにちょっと違う、と言う点で合意に達することが出来る、と言う意味でもちょっと違うようだ。
     この国際的でもある妙なな違和感は一見どうでもよいように見えて、実はどうでもよいことでは決してない、と思う。世界五十億の人間が様々な価値観を持ってそれぞれ生活している中で、全く違う文化を持ち生息している場所がむちゃくちゃ離れた人間同士が、ちょっと違う、と言う点だけでも合意に達することが出来ると言うことは実に驚異的なことだと思う。
     それは、翻訳という言語藝独特の加工技術を通すと、概念的なものが共有しやすいからだ、と言われれはそれまでなのだが、少なくともちょっと前に流行った王様や女王様の翻訳ロックを聴いてリッチー・ブラックモアやフレディ・マーキュリーの言葉に心を揺さぶられたとかいう日本人をあまり聞かないところを見ると、やはり安部公房だけ特別なのかもしれない。
     それくらい偉大な安部公房なのだが、この作品集はまた、夢にでてきそうなすてきなテーマに満ちあふれていて、あなたも安らかな眠りの中で頭を悩ますこと請け合い、と言った感じの本で、やっぱりいつものようにちょっと違う。でも期待通り。


02/20 探究T               柄谷行人     講談社学術文庫
     柄谷行人はさほど偏執的ではないとは思うのだが、あるひとつのことを大局的に考えようとして、それが全体的にバランスがとれず、そのアンバランスさが私にはとても心地よく感じられる。もちろん『日本近代文学の起源』などのきちんと俯瞰できてバランスのとれたお仕事もいいのだが、この本のように後を引かないアンバランスさは読んでてきもちいい。


02/22 神の火(下)            高村薫      新潮文庫
     なんか近頃この作品に近いようなことが日本海近辺で起こっているとうわさに良く聞きます。かつて落合信彦さんが人騒がせに吹きまくったお陰で、作中にあの国を出してしまうと、とてもウソ臭くなるのですが、なぜかこの作品はウソ臭くなかったです。そういったことなので、結論として高村薫は侮りがたいです。

02/26 愛の重荷              源氏鶏太     集英社文庫
     源氏鶏太は女の性行動と言うものを紋切り型にとらえがちだと言うことに気づいた。まあ、それが日本の男流の大多数であるのだが、サラリーマンをいくつもの作品の主人公にしている源氏鶏太だからこそ、性差を越えたらすごい作品を遺したのではないかと無責任に思う。このひとはゲイだったらもしかしたら日本の言語藝術を変えたかもしれない。谷崎なんか超えてたね、多分。

平成11年2月の1等賞

02/17 R62号の発明・鉛の卵       安部公房     新潮文庫



平成11年2月の2等賞
02/11 神の火(上)            高村薫      新潮文庫
02/22 神の火(下)            高村薫      新潮文庫

平成11年2月の次点
02/26 愛の重荷              源氏鶏太     集英社文庫


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