よいこの読書日記−平成13年04月

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読んだ本
04月05日 大山倍達とは何か?                   ワニマガジン社
04月13日 海狼伝                    白石一郎 文春文庫
04月14日 空手に燃え空手に生きる         芦原英幸 講談社
04月17日 ながさき阿蘭陀年 作文・論文コンクール作品集 ながさき阿蘭陀年推進協会
04月19日 寓話 上                  ウイリアム・フォークナー 岩波文庫
04月22日 九州芸術祭文学賞作品集 31      財団法人九州文化協会
04月23日 深い河                   遠藤周作 講談社文庫
04月25日 白い服の男                星新一  新潮文庫
04月26日 ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編  村上春樹 新潮文庫
04月29日 全訳 源氏物語 中巻          与謝野晶子訳 角川文庫
今月の順位


04月05日 大山倍達とは何か?                   ワニマガジン社
 いろんな方が語る大山倍達について書かれた本。どうしてこんなものを読んだかというと、こんなものを読ませてわたくしのコメントを聞きたがるお客様がいらっしゃって、わざわざわたくしにこのような傾向の本を贈与なさるのです。
 しかし、こんなもの、といってすませてはならないのはわたくしが大山倍達総裁の曾孫弟子に当たるからなのですが、この本にでは、大山総裁に近かった方を何人も集め、個別に長いインタヴューをしています。これはある種画期的なことです。
 それで、結局その方達が語る大山倍達総裁を総合して考えると、大体が豪気な方だ、という点で一致するようです。またお金に細かかった、という点でも一致するので結局どうなのかよくわからなくなって、結局いわゆる梶原一騎的電波まみれの大山総裁像に回帰してしまいます。
 もしかしたら虚構になるギリギリまで過度に脚色した現実というものは、素晴らしく現実というものの要約になるのではないかなと読んだ後にそう思いました。
04月13日 海狼伝                    白石一郎 文春文庫
 昔から長崎の人間は国境に面しているにもかかわらず、文化的なものを東や中央に依存するから全然面白くねえんだよ、と言う持論を持ちそれに従って行動してるつもりの俺なんだけど、今回四ヶ月半長崎にいてその持論がさらに強く裏付けられ、もうほとんどトラウマ。
 で、今回呼んだこのお話は見事に東を向いて九州北部を世界の中心として捉えているので確実に面白い状況が表出しているし、時間をかけて丁寧に作品が作られている。これを読んで俺はとりあえず今後、二十一世紀倭寇、をあちこちで名のることにした。これは俺の気持ちの問題だから誰にも文句は言わせない。
04月14日 空手に燃え空手に生きる         芦原英幸 講談社
 ケンカ十段芦原英幸の自伝本。ケンカ十段、と言われてもピンとこないかもしれませんが世の中にはそう言われてすぐピンと来る人も多数いるのです。一般人がこの本を読んだらともすればオヤジの自慢話に終始した本、とそう感じるのではないかと思うのですが、よくよく奥付を見たら二年で第五版。四回も増刷されています。と言うことはこの自慢話を支持する人が多数存在すると言うことなのです。
 実は私の師匠がこの方のところで学んでいたことがあるらしい。師匠によると芦原英幸という人はとても人間くさい魅力に溢れた人のようです。もしそうならこれは弟子の方々が師匠である芦原英幸がナマで語ることを反芻するために買っていたのではないかなと思いました。
 一度ナマで本人の話を聞いてみたいものなのですが、何年か前に他界された今となっては実現不可能です。とりあえず人間くさい魅力に溢れた喋り、とはどういったものなのか想像しながら読むと楽しい本だと思います。
04月17日 ながさき阿蘭陀年 作文・論文コンクール作品集 ながさき阿蘭陀年推進協会
 つまんね。もっと毒吐けよ頼むから。
 皆様真面目に長崎の今後について語っておられるが、その程度の語りですまされる以上に長崎のつまんなさは深刻だと言うことがよくわかっていない事自体が深刻な問題だと思った。
 どの作品も読んでてかつて倭寇がいた県に住んでいる人たちが書いたのだとはとても思えない。もし選考過程で毒のない作品ばっかり選んだのだったらその姿勢も問題。別に略奪殺戮などする必要はないけど西方の海に出て世界を知ろうとするくらいの気概があるヤツが一人くらいいてもいいじゃん、と思う。
 あと、部門が年齢別に分けてあるので、小学生中学生の順に着想の自由度が制限されてゆき、高校生になると完全に独自性が死んでしまっているのがはっきりする。読んでて教師が喜ぶ作文を書くために何の迷いもなく専心する高校生の姿がリアルに妄想できてしまうほどだ。
 どうやらわたくしが出てから十年以上経って、長崎のつまんなさはますます深刻になっているようです。二十世紀倭寇としてはゆゆしき自体だと思った。
04月19日 寓話 上                  ウイリアム・フォークナー 岩波文庫
 戦争物なのですヨーロッパの。フォークナーですからいつものようによく頭に入らないのですが、頭に入らなくても戦争が凄く生々しく感じられるのです。しかも、戦車がまだ導入されていない第一次世界大戦のお話らしく、塹壕、というものがでてくるのですが、あの狭い溝の中でうぞうぞと蠢く兵隊さん達を想像しただけでそれはもう暑苦しいのです。塹壕とフォークナーの文体、そして今ここで日中四十度を越える気温ともう読んでて素晴らしく暑苦しい条件が揃いまくりでずるずるずるずると暑苦しいまま読み進めてしまうのです。
04月22日 九州芸術祭文学賞作品集 31      財団法人九州文化協会
 一番面白かったのは事実上一等賞である佳作の『サーンド・クラッシュ』。印象に残ったのは佐賀県地区優秀作『逃げ水の彼方に』と、長崎県地区優秀作の女子高生が書いた『未来の現実、透明な夢』、のふたつ。
 もう三年間続けて読んでいるのだが、この作品集、いろんなのが読めるし、その各作品に対する批評がまあ凄く納得が行くものなので読み比べていて面白い。来年も読めるといいなあ、と密かに楽しみにしていたりする
04月23日 深い河                   遠藤周作 講談社文庫
 面白いなあ遠藤周作。こんな風にヴァラナスィをリアリティあるフィクションで書けるのならバンコクを書いたりしたらこのあたりに生息するゴロツキライターさんたちはみんな立場無いだろうなあと思った。
 いろんな人を平等に横から見て書いているのだが、それが凄くフェアに感じられるのはやっぱり神以外はみんな平等、という凄く普遍でありふれた考え方にこの人が徹底してたからなのだなと思う。それが今回はキリストを前面に押し出さずインドを舞台にしたから神が凄く普遍的になってキリスト教的な説教臭さが感じられなかった。
04月25日 白い服の男                星新一  新潮文庫
 今まで読んだ星新一の中では確実に一番大人っぽい作品集。どうやらわたくしは星新一に対してある種、偏見じみたステロタイプを自分の中に抱えていたようです。
 もしかしたらもっとアダルトな星新一の作品というのがこの世の中には存在するのではと思い、思わず探したくなるような作品集でした。
04月26日 ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編  村上春樹 新潮文庫
 もしかしたら今までと違う村上春樹なのかな、と期待して読んだら今までと違うと思わせようと周到に計算してはいても、結局今までと同じ村上春樹のような気がした。でもまだ三分の一しか読んでいないことを考えるともしかしたら今までと同じじゃないのかもしれない。
 結局、今までと同じじゃねえか、と悪態をつかせながらもずるずる読ませるところがこの人の巧いところなのだが、サクサクどんどん読んでしまう自分が凄くやだ。
04月29日 全訳 源氏物語 中巻          与謝野晶子訳 角川文庫
 結局、光源氏という人は浮気性でロリコンでいい感じに電波入ってるオヤジだと言うことがよくわかった。しかしそれが許されていて、読んでる方もそれを許してしまう、と言うのはあながち内容が凄く長くてマインドコントロール的にずるずるずるずるとその状況をリフレインさせられているからと言うだけの理由では決してないと思う。要するにやはり、紫式部が巧いのだろう。

成13年04月の順位
一等賞
04月13日 海狼伝                    白石一郎 文春文庫
弐等賞
04月23日 深い河                   遠藤周作 講談社文庫
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04月22日 九州芸術祭文学賞作品集 31      財団法人九州文化協会
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