藝道日記。(平成 10/03/15)
平成十年三月十五日

 タニヤ出撃。

 日中安静。とりあえず読みかけだった大江健三郎の『僕が本当に若かった頃』(講談社文芸文庫)を読む。病気で気が弱くなっているときに大江の健ちゃんを読むと、非常にハマって良い。

 ついでに三田誠広の『いちご同盟』(集英社文庫)も読む。凄くムカつく。作品も含めてこの人についてはムカつくことがあるので、自分のホームページの方で派手に叩くことに決めた。

 当然、しばらくのあいだはビールも、炭酸飲料でさえも飲まない方がいいので、Hale'sという名の濃縮シロップを買ってきて、それを水で割って飲む事にする。ちなみに製作中の『おまんこについて』(仮題)は一行だけ書く。まったく持って仕事は進んでいないが、スタッフの尽力によりホームページだけは更新する事が出来た。
 しかし、この甘ったるいHale'sにはハマリそうな予感がする。

 そして夜。

 二枚刃で逆剃り入れて頭をつるつるにした後、マレーシアホテルへ。私のファンであるじゅん太様(仮名)が御来泰なされていて「飲みましょう」との有り難いお言葉をいただいたからである。久しぶりにお会いしたじゅん太様(仮名)は相変わらず素敵な男前ぶりである。不惑の年を過ぎてまだ独身だという事だったが、こっちの日本人社会にありがちないやらしいオヤジの匂いが全然しない。見習いたいものである。

 さらに差し入れとして味噌と日清行列が出来る店のラーメン、ほんだし、餅などをいただく。有り難いことである。その後じゅん太様(仮名)を連れてカオサンを案内し、それから、バンコク夜の帝王(仮名)様と待ち合わせているタニヤのサリカカフェに蹴り込む。じきに帝王(仮名)様が現れて無事合流。

 そしてまずはタニヤの中華料理屋でお食事。おそるおそるビールを一杯だけ飲んでみるが、大丈夫なのか大丈夫じゃないのかよくわからない感触を胃に感じて、やはりしばらく飲むべきではない、と判断。

 その後店を出て、タニヤのクラブを物色。歩いているとあちこちの店の前にいる呼び込みのお姉ちゃん達から「一休さーん」と声がかかる。そう言えばさっきから他人の視線が熱い、と思っていたら、どうやら剃りたての頭と着ている浴衣のせいらしい。注目されるのは有り難いことではあるが、雪駄が用意できずに履いているのがビーチサンダルであることを思うと悲しくなった。

 結局、私の昔のバイト先の社長が、自由に飲んでいいと行って帰国した、有り難いボトルが入っている店に入り、二時間ほどカラオケ。この恰好で『とんちんかんちん一休さん』を歌ったらきっと店のオネエちゃん達から確実に笑いがとれるだろうと思って探すが、オケ本にはない。しようがなく、X-JAPANでお茶を濁す。ある程度オネエちゃん達には喜んでもらえたが、中途半端なウケ具合になんとなくフラストレーションを感じていたところ、オネエちゃんに、徳永英明の『最後の言い訳』を歌うよう命令されて歌う。凄くウケたので驚く。なぜ徳永英明がこんなにウケるのか、全くもって謎である。

 徳永英明はナメちゃいかんな、と思いを新たにしながら店を出て、じゅん太様(仮名)らとお別れ。一人で帰る。じゅん太様(仮名)にはいつもごちそうしていただき実に有り難いことだと思うと同時にファンの皆様に喜んでいただけるようないい仕事をしなければいかんな、と思う。

初出・JIMMY KUN PAGE Vol.2

E-Mail:hinkaw@chan.ne.jp
(C) 2000 SHIRAISHI Noboru