若者は私に向かって、あんた日本人やろ、俺も日本人や、あんた、なんやそのカッコはと言う。もう一人比較的酔ってなさそうな日本人の若者が近づき、その酔った若者を後ろから抱きかかえ、お前もう酔っぱらってるんだから、すわろ、と言って私から引き離しながら、ひとこと、すみませんこいつ酔ってるんです、と言ってテープルに戻っていった。
ビリヤードプールの脇にいるネットワーク責任者のところに戻ると、どうやらその酔っぱらい若者は、この店の店員ともめ事を起こしたらしいという説明を聞かされる。私はなんだそうだったのかあ、と納得がいきながらも、若者に言われた、なんやそのカッコは、と言う言葉を思い出し、その発言について納得が行かなくなる。
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浴衣着て外を歩くより、店員ともめ事を起こす方がよっぽど日本の恥だと思うぞ、第一人に迷惑がかかる、とひとりごちながら私は、ビリヤードをしている友人の、このゲームが終わるまで待ってくれ、と言う言葉を聞き、とりあえず席に座る。
そして思い出したように田口ん坊の姿を探すがなんのことはない、田口ん坊は私の目の前でテーブルに突っ伏して潰れていた。声をかけるとぐらりと傾いでゆっくりと起きあがり、ぼくもほだめでしゅゅうやろにいくわえりましゅう、という呂律が回らず聞き取りにくい言葉を残して宿の方に向かって歩いていった。私の、おやすみなさーい、と言った言葉は聞こえてないようだった。 |