よいこの読書日記−平成9年4月


読んだ本

04/10 高野聖・眉隠しの霊          泉 鏡花  岩波文庫
04/12 モンパの木の下で           椎名 誠  文春文庫
04/14 同族企業               清水 一行 集英社文庫
04/15 蚊                  椎名 誠  新潮文庫
04/21 ホテルアジアの眠れない夜       蔵前 仁一 新潮文庫
04/28 屋根裏の散歩者/D坂の殺人事件    江戸川乱歩 新潮pico文庫
04/29 伽椰子のために            李 恢成  講談社文庫

今月の順位


04/10 高野聖・眉隠しの霊           泉 鏡花  岩波文庫
     山の話は、涼しくて、良い。山蛭なんかもひんやりして良かった。全体的にひやひやするこの本の雰囲気は4月のクソ暑いバンコクで読むととてもグー。

04/12 モンパの木の下で            椎名 誠  文春文庫
     面白かった。この人はいつもさして美味しそうでもないものを、とても美味しそうに書いたり、さして面白くないようなことをすごく面白く書いたりする人だと思う。でも、プロボクサーになった息子のデビュー戦の結果を聞くのに後楽園ホールに電話するのは、気持ちはわかるがいただけない。後楽園ホールの人は、ゴミの後かたづけや、切符の販売、笑点の公開録画の準備などで結構忙しいものです。試合の結果は主催者に聞きましょう。

04/14 同族企業               清水 一行  集英社文庫
     かなり、強引なワンマン社長が出てくる。こんな社長いるかい、ってほどやりたい放題で気持ちが悪くなるほどだが、よくよく考えてみれば、こんな社長いてもおかしくないし、こんな社長の下で我慢強く働く社員も少なくはないと思う。社長だからしょうがない、って前提のもとにこの小説は成立しているが、社長がナンボのモンじゃい、って社員がやりたい放題にやる小説があったらそれはそれで気持ちがいいと思った。

04/15 蚊                  椎名 誠
     初めて読んだ椎名誠の小説。しかも短編集。エッセイが面白く、他人の評価が高く、事実売れているので期待したのだが、期待はずれ。と、いうより過度に期待しすぎたようだ。読みやすく、面白くはあるのだが、きっと二度と読み返すことはないだろう。でも、いっぺん読んどいてよかった。

04/21 ホテルアジアの眠れない夜       蔵前 仁一  講談社文庫
     海外旅行情報誌『旅行人』の編集をしている人が書いた本。旅行情報としてはマル。でも旅行情報は新しくないと意味がない。なんかそこに行けば誰もが目にする現地の人の日常をそのまま垂れ流しただけのような気がして、少し不快になった。あえていえば、まるでタレント本みたいだった。

04/28 屋根裏の散歩者/D坂の殺人事件    江戸川乱歩 新潮pico文庫
     乱歩を初めて呼んだのは小学校四年生の時、多良見町立喜々津中学校にあった『電人M』を読んだ。じつにそれから18年も経って、これが2冊目の乱歩。18年。今考えてみたけどすごい年月だ。18年も経っちゃったらそのとき産まれた女の子はちょうどいい感じの頃で、男の子はヤリたい盛り。男も女も立派に動物として発情期テンパってる頃でしょう。そういった土台をふまえた上で、18年ぶりの乱歩はとてもいい感じの変態が出てきて非常に良かった。冷静に考えてみれば、明智小五郎も立派な変態だと思う。

04/29 伽椰子のために            李 恢成 講談社文庫
     おともだちのたかしちゃんが、つきあってて別れそうになった彼女に、読まされたという、きっかけとしては少しおそろしい本。でも、たかしちゃんのことなど忘れてしまうほど、程良く俗な人たちが一生懸命に悩む良い小説だった。登場人物は俗すぎてもただ面白いだけであまりリアリティがないし、まっとうに悩んだりしてるとただスカしてるようで疲れたりムカついてくるだけなので、なにごともほどほどが良い。

平成9年4月の1等賞

04/29 伽椰子のために            李 恢成  講談社文庫



平成9年3月の2等賞

04/10 高野聖・眉隠しの霊          泉 鏡花  岩波文庫



平成9年3月の次点

04/28 屋根裏の散歩者/D坂の殺人事件    江戸川乱歩 新潮pico文庫



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