よいこの読書日記−平成9年8月
読んだ本
08/02 ジェイルバード
カート・ヴォネガット ハヤカワ文庫
08/12 中上健次の世界
集英社
08/15 改訂新版 心理現象論序説 吉本隆明
角川文庫
08/17 竜馬がゆく(六) 司馬遼太郎 文春文庫
08/20 砂の本 ボルヘス 集英社文庫
今月の順位
08/02 ジェイルバード カート・ヴォネガット ハヤカワ文庫
ヴォネガットは空想世界をわかりやすく空想世界だと明らかにした上で、人間らしい人間やアメリカらしいアメリカ、世界らしい世界を描き出す。これは日本の出版業界にてノンフィクションと銘打ったゴミみたいなフィクションで小銭を稼ぎ続ける才能ない人たちよりずっと困難で力を必要とする事だと思う。一度お会いして話を聞いてみたいものです。
08/12 中上健次の世界
集英社
実家から2名渡泰して、自宅に送られて来たこの本を持って来てくれました。全集をちゃんと全巻買ったので集英社がくれた非売品です。単純に全集の月報を一冊にまとめてそれにいくつか評論を加えたものだがメンバーが凄い。ビートたけし、坂本龍一、都はるみ、原田芳雄、いとうせいこう、など著名だと思われた順にテキトーに並べてみたが、以下省略した人たちもすごく個人的には豪華なメンバーである。そしてその方たちが言っている事がかなり気持ち良くバラバラだ、っていうのが輪をかけて素晴らしい。この先自分が中上に関して何か書くとすれば一筋縄ではいかんな、とつくづく自覚させられました。
08/15 改訂新版 心理現象論序説 吉本隆明
角川文庫
去年、『TUGUMI』の舞台である伊豆で溺れかけた吉本父隆明さんがフロイド・ユング的に人間の心理的な動きを分析した本。娘ばなな氏ばかり読むのはバランス的に良くないと思ったので読んでみました。娘が天然を覆い隠して養殖的な努力で読者を掴んでいるのに対して、父隆明の方は全く逆のような気がした。論説を図で明確にするところなど、非常に右脳的かつ天然的である。が、養殖的な思想家として自分を確信するあまりに、時々高飛車な記述にぶちあたってムカつくときがある。でも、この人は天然としてある意味何やっても許せる方なのでそういう事があっても読むのをやめずに、伊豆で溺れかけたヤツがなにえらそうな事ゆうとんねん、と呟くようにひとりで突っ込むだけにとどまりましょう。 
08/17 竜馬がゆく(六) 司馬遼太郎 文春文庫
小説の舞台として長崎が出て来るが、私は18年間長崎市の隣にある西彼杵郡多良見町に住んでいたのに、考えてみればグラバー邸も亀山社中跡にも行った事がない事に気付いた。今度来崎することがあれば行ってみたいとは思う。ちなみに築町にあった旧西道場(当時は大道塾長崎支部)から、稽古が終わった後、西先生や先輩方に飲みに連れて行ってもらう時に通る、ぐるっと裏をまわる道が、私は好きでした。あれからもう10年です。10年たつのは長かったですとしみじみさせる第六巻でした。
08/20 砂の本 ボルヘス 集英社文庫
脊椎を折られましたね、この本には。私も良くこっちで会うアイルランド人にジョイスの話をしたり、イタリア人にモラヴィアの話をしたり、韓国人に金芝河の話をしたり、東北タイ人の前で浴衣着てソムタム作ったりして、アイデンティティの脊椎折りまくってるのですが、アルゼンチン人に吉良士野の介の小説書かれるとさすがに、脊椎折られまくりです。ショックすぎます。書くなよボルヘスそんなもん。日本なんてアルゼンチンから見たら地球の裏側だぞ。そして私はきっといつかアルゼンチン人に復讐してやろうと固く心に誓うのでした。
平成9年8月の1等賞
08/20 砂の本 ボルヘス 集英社文庫
平成9年8月の2等賞
08/15 改訂新版 心理現象論序説 吉本隆明
角川文庫
平成9年8月の次点
08/12 中上健次の世界
集英社
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