よいこの読書日記−平成9年9月


読んだ本

09/14 嫉妬の時代         岸田 秀   文春文庫
09/20 中上健次全集7       中上 健次  集英社
09/22 アメリカ          フランツ・カフカ   角川文庫
09/27 竜馬がゆく(七)      司馬遼太郎  文春文庫
09/28 ソフィーの世界        ヨースタイン・ゴルデル  NHK出版

今月の順位


09/14 嫉妬の時代         岸田 秀   文春文庫
     基本的に岸田秀はフロイドバリバリの精神分析的手法により、日本国民の中に潜在的にある嫉妬的感情をあぶり出すのだが、実のところ何よりも著者である岸田秀が一番嫉妬しているのが明白である。冷静を装った文体ではあるが、その岸田秀のやっかみが文中に見えかくれするのが面白い。素晴らしい藝をお持ちの学者さんだと思った。
     ちなみにこれも含めて岸田秀の3冊はDioゲストハウスからミン女将のすてきなまなざしによる許可を得て、円満にパチってきたものです。ミン様、ありがとう。そして、Dioに置いてってくれた方、とてもありがとう。

09/20 中上健次全集7       中上 健次  集英社  
    日輪の翼
        文春文庫で読んでいたので再読。一言でいえばロードムービー的なのだが、再読してみると、一度目と同じように、冷凍トレーラーでまわった順番がはっきりしない。これはおそらく私の記憶力だけの問題ではなく、これは、構成と文体がもたらす中上の技術力にあるものと思うが、めんどくさいのでそのことについては今度読んだときにまた考えてみることにしようと思う。
    讃歌
        これも再読。この作品はかなりワイセツだと思う。しかし謎なのはヘテロとホモの性行為がどちらも同じようにそそる事である。私は特別ホモセクシャルではないが、これは不思議だったので、半年後くらいにもいちどあらためて良く考えてみようと思った。

09/22 アメリカ          フランツ・カフカ   角川文庫
     面白い。もしかしたらカフカの作品の中で一番、読後すぐ面白いと感じたのはこの作品ではないかとすら思えた。いちおう書いている途中に死んじゃって、未完のようだが、もしもーちょっと生きてこの続きや、違う作品を書いたらすげぇ売れるひとではなかったのかなカフカという方は。

09/27 竜馬がゆく(七)      司馬遼太郎  文春文庫
     薩摩と長州を同盟に導いた竜馬は、武力行使を避けた大政奉還を考え出すが、無意識のうちに、その根底にはその後の自分の会社の利益がかなりの比重で占めていると思われる。そんなにそろばんずくで世の中を動かそうと考えても竜馬がなぜか許されるのは彼が天然だからなのでしょう。いーなぁ、天然って。

09/28 ソフィーの世界       ヨースタイン・ゴルデル  NHK出版
     同じ会社のSちゃんに借りました。はっきり言うが、思想のガイダンス的小説としては私は筒井康隆の『文学部唯野教授』の方がずうっと面白かった。笑わせる技術はそうレヴェルが高いとは言えないが、さすがに売れただけあってストーリーテリングと物語の振り回し方は見るものがあった。この先、スカしたやつが見栄を張る為だけに読む本にならなきゃいいけど。

平成9年9月の1等賞

09/20 中上健次全集7       中上 健次  集英社



平成9年9月の2等賞

09/22 アメリカ          フランツ・カフカ   角川文庫



平成9年9月の次点

09/28 ソフィーの世界       ヨースタイン・ゴルデル  NHK出版



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