よいこの読書日記−平成9年10月


読んだ本

10/04 鉄道員 ぽっほや         浅田次郎    集英社
10/05 オールスパイス 20ー1
10/05 オールスパイス 20ー2
10/17 27                 原田宗典     角川文庫
10/18 竜馬がゆく(八)  司馬遼太郎   文春文庫
10/18 中上健次全集10       中上健次     集英社
10/23 迷夢 9.0
10/26 サイダーハウス・ルール(上)  ジョン・アーヴィング  文春文庫
10/30 不惑の雑考             岸田秀     文春文庫

今月の順位


10/04 鉄道員ぽっほや             浅田次郎    集英社
     これも同じ会社のSちゃんから借りた本。泣かせる本だとは聞いていたので意地でも泣くもんか、と思っていたら、うるうるしてしまいあやうく泣きそうになった。短編集であり、その中の『ラブ・レター』というのが、在日外国人モノだったが、日本人の男の立場で、どう考えても都合のいい好意を寄せられる、という設定なのだが、すごく印象に残った。浅田次郎、このオヤジ、ただ者ではない。これから読者をいつまで泣かせられ続けるのか、見モノである。

10/05 オールスパイス 20ー1
     良かったものを3つ、『はるはるはなはな<前編>』、『デッドアイランドカフェ<第3回>』、『Parplish Pain<第2回>』。こういった連載ものは最初のインパクトが強いと、あとは平均的にレヴェルをキープするだけで、ずっと面白いな、と『はるはるはなはな<前編>』を読んだ後、我が身を省みながらそう思った。

10/05 オールスパイス 20ー2
     熊谷みゆきさんのさし絵が良かった。佐佐木昭后さんの『人生フリーハンド劇場H9.春休み.バイト以外にした事は・・・。』が面白かった。20号記念という事で編集棟梁鈴木さんのインタビューがのっていたが、アマチュアで10年以上も続いてきたのはすごい事だと思います。これからもがんばっていい本作って下さい。ホームページの方も更新しましょうね。 

10/17 27                 原田宗典     角川文庫
     エッセイ集。面白い。しかし今思い返すと何が一体面白かったのかぜんぜん思い出せない。まるで終わった後の予防注射の怖さに似た面白さの本。しかしこのように書いている本人が自らにツッ込みを入れるような随筆は恥ずかしくて私には絶対書けないだろう、と、読みながら何度も思った。書いてしまった後に自己嫌悪に陥ってしまいそうな、こういった種類の藝をウリにしている原田宗典からは捨て身のキアイすら感じられる。

10/18 竜馬がゆく(八)  司馬遼太郎   文春文庫
     ついに大政奉還、そしてエピローグ、日本史上最強の天然死す。もう死んじゃっていないけど司馬遼太郎にはええ仕事見せてもらいました、お疲れさまでした、といいたい。あとがき集を読むと司馬氏の真面目なお仕事に対する姿勢が良くわかります。とても真面目でステキです。私ももうちょっとまじめにやろうと思った。

10/18 中上健次全集10          中上健次     集英社
    重力の都
       再読してみると、この短編集に収められた短編は、中上の全仕事中それぞれかなり重要である事がわかった。何がどう重要なのかはヒ・ミ・ツ。
    奇蹟
       文字通り奇蹟的な作品である。一見マジック・リアリズムのように感じられるところもあるが、中上がやると文章、構成が全く別のリアリティを帯びて来る。そして日本語が何よりも美しい。

10/23 迷夢 9.0
     白石昇退会記念号、と自分で勝手に名付けてしまう。退会理由はタイ経済の悪化です。日本円の会費が払えません。しかし、迷夢さんは寛大な団体さんで、退会してもインターネット上での参加を認めていただいてくれているどころか、私の作品を入手したい方の窓口までやってくれてます。本当に京都に足を向けて寝られないどころか、京都がどっちの方向なのかさえここからでは良くわかりません、で、良かった順にみっつ、『彼女の彼と私』『大吟醸』『霧の中』。 

10/26 サイダーハウス・ルール(上)  ジョン・アーヴィング  文春文庫
     Bantam Bookの原文は持っていたのだが、英語が大して読めず、かといってハードカヴァーを買う気などさらさらなかったので、いつか英語がお上手になったらきっと、読めるようになるだろうと思いつつも、文春文庫化されたことをソムタム屋台のおばちゃんから聞き(ウソ)、同じ会社のSちゃんが東京に行く際に買って来てもらいました。
     まだまだタイバーツが下落する前だったのでたいへんお金がかからず、300バーツくらいで買って来てもらえたのでラッキーでした。
     しかしアーヴィングは、どの作品を読んでもたいてい、奥行きの深い、まるで脚本のよく出来た映画を見ているような気になってしまうのだが、この作品ではそれがさらに目立っていた。しかしディケンズとプロンテ姉ってのはなんか示唆的だ。 

10/30 不惑の雑考             岸田秀     文春文庫
     岸田秀は自身をフロイド的に分析した上で自分の生いたちを語り自分のトラウマは全て母親に原因があり、という風に一見冷静に分析しているように見えて、その実、母親に対する恨みつらみがほとんど剥き出しのまま見えかくれする。不惑どころか40過ぎて、こんなに人間臭くて子供っぽく、惑いまくりの岸田秀を私はかなり好きになりました。
     ちなみに、解説は何年か前に新婚旅行でパンガン島ハドリンビーチに来てた時に不運にも私に話しかけられた大鶴義丹さんです。最近作品書いてるのか良くわかりませんが、私はこの人が『スプラッシュ』で書いた女の乳首がかなり好きだったりします。がんばってね義丹ちゃん。

平成9年10月の1等賞

10/18 中上健次全集10       中上健次     集英社



平成9年10月の2等賞

10/18 竜馬がゆく   司馬遼太郎



平成9年10月の次点

10/04 鉄道員 ぽっほや         浅田次郎    集英社



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