よいこの読書日記−平成10年6月


読んだ本

06/02 改訂新版 言語にとって美とはなにか T         吉本隆明  角川文庫
06/03 癌病船                 西村寿行  角川文庫
06/05 雨がやんだら              椎名誠 新潮文庫
06/07 改訂新版 言語にとって美とはなにか U         吉本隆明  角川文庫
06/12 ガラス玉遊戯(上)          ヘルマン・ヘッセ  角川文庫
06/13 尻啖え孫市          司馬遼太郎 講談社文庫
06/14 もの食う人びと          辺見庸 角川文庫
06/19 元禄いろは硯          山手樹一郎 双葉文庫
06/19 タイ語エクスプレス          水野潔・上田玲子 白水社
06/25 ひとり歩きのタイ語自由自在    JTB 日本交通公社
06/25 ガラス玉遊戯(下)          ヘルマン・ヘッセ  角川文庫

今月の順位


06/02 改訂新版 言語にとって美とはなにか T       吉本隆明  角川文庫
      天然オヤジは相変わらず天然です。きちんと日本の近代の言語藝術と言う分野を徹底して俯瞰しようとしているのですが、なにぶん天然だけに天然らしき味が各所に発揮されてて、いかにも吉本、と言った感じです。

06/03 癌病船                    西村寿行  角川文庫
     寿行、と聞くだけでなんかドキドキしてきます。私の中のオヤジの血が騒ぐのでしょうか。寿行、と言えばなんとなくオヤジのイメージがあるのですが、それはきっとオヤジのニーズを満足させるだけのものが寿行の作品にはあるからなのでしょう。少なくとも私は、愛読書は西村寿行でーす、と胸を張って言う若い女には会ったことがありません。まあ若い女に限らず、そんなことを言うオヤジにも会ったことはないのですが。私は良く高校生の時に読んで知的好奇心を充足させたものです。
     今回の設定は世界中から集められた癌患者だけが乗り込める船が舞台。それだけで何が起こるのかとドキドキしてしまうのですが、いささか尻すぼみの形で作品は終わります。しかし寿行はやはり寿行でした。尻すぼみでも寿行なりの濃い満足感が得られます。少なくとも私は寿行には何も期待する気はありませんが、確実に何かを期待しています。寿行って素敵。

06/05 雨がやんだら              椎名誠 新潮文庫
     あまり印象に残らない短編集だった。何より、筒井康隆に似ているのが気になった。でも、非常に読みやすかった。

06/07 改訂新版 言語にとって美とはなにか U         吉本隆明  角川文庫
     この方は良く図を書くのだが、その図がきっちりと理解できたためしはないような気がする。図とは本来、文章で説明しにくい部分をわかりやすくするためのものだと思うのだが、あまりわかりやすくなったためしはない。もしかしたらこの図はこの天然吉本オヤジが自分の考えを整理するために載っけてるのだとさえ思える。それはそれで凄く天然の苦悩というものが滑稽に感じられる分、凄く許せる。

05/12 ガラス玉遊戯(上)          ヘルマン・ヘッセ  角川文庫
     ガラス玉遊戯、とは非常にメタフォニカルな精神の修業のことのようだが、それが良くなんなのか理解しづらい、しかしとても崇高な修業のことらしく、それだけは理解できる。ヘッセの他の作品を読んでないと理解しづらいかもしれないが、それでも何とかインテリじじいが自らの悟りを語っているのを聞いているようなおもしろさがある。

06/13 尻啖え孫市          司馬遼太郎 講談社文庫
     孫市は非常に魅力的な人物です。女のためなら嫌いな信仰さえ容認してしまうとこなど、非常にわかりやすく同感できるような方でした。こういう方になりたいとつくづく思います。

06/14 もの食う人びと          辺見庸 角川文庫
     誰もが共有できる食う、と言う行動とりあげ、あざといことはあざといと思うのだが、元通信社の人間らしく、切り口が非常にジャーナリスティックで新鮮。でも文体はジャーナリスティックでもなんでもないとこがイカしている。

06/19 元禄いろは硯          山手樹一郎 双葉文庫
     忠臣蔵モノ、というのを初めて読んだ。忠臣蔵、というのはかなり日本人のツボにはいるらしく、生まれて29年間、忠臣蔵というものから遠い暮らしを送ってきた私としては日本人という方たちがとても奇妙に思える。きっとボルヘスもブエノスアイレスでそう思ってたんだろうな。
     その国民的チャンバラネタの忠臣蔵を取り扱っているのだが、この作品にはチャンバラが全然印象に残らない。なんとなく静かで大人しい私小説を読んだみたいな読後感。スカされた感じもしたが気持ちよかった。

06/19 タイ語エクスプレス          水野潔・上田玲子 白水社
     五回目。練習問題の正解率は82パーセント。最近何かに行き詰まると私はこのテキストを一からやるようにしているようです。相変わらずヤマダは下心丸出しだし、カイは打算的で、やるたびに非常に安心できます。きっと彼らはずっとそのままでいてくれることでしょう。

06/25 ひとり歩きのタイ語自由自在    JTB 日本交通公社
     タイ語の例文を全部ひと通り書き写しました。非常に実用的な例文が並んでいてためになりました。しかし何一つとして覚えちゃいません。何のために写したのか理解に苦しむところです。

06/25 ガラス玉遊戯(下)          ヘルマン・ヘッセ  角川文庫
     なんとなく引き延ばすだけ引き延ばしておいて、投げっぱなしの結末。非常にむかついたので、いつかまた読んで再びむかつこうと思いました。

平成10年6月の1等賞

06/13 尻啖え孫市          司馬遼太郎 講談社文庫



平成10年6月の2等賞

06/14 もの食う人びと          辺見庸 角川文庫



平成10年6月の次点

06/02 改訂新版 言語にとって美とはなにか T         吉本隆明  角川文庫
06/07 改訂新版 言語にとって美とはなにか U         吉本隆明  角川文庫



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