よいこの読書日記−平成10年8月


読んだ本

08/10 武州公秘話             谷崎潤一郎 中公文庫
08/18 霧越邸殺人事件           綾辻行人 新潮文庫
08/19 風のかたみ             福永武彦 新潮社
08/25 迷夢 Vol.10
08/29 色ざんげ             宇野千代 新潮文庫
08/30 半生の記              松本清張 新潮文庫

今月の順位


08/10 武州公秘話             谷崎潤一郎 中公文庫
     変態大爆発です。谷崎潤一郎は日本が世界に誇る大変態だと私はいつも思っていて、それを裏付けるようにバンコクで時折会う谷崎フリークの欧米人はそろいもそろって変なやつばかりなのですが、この作品は特にその変態性が大爆発していてとても気持ちよく、愛知の工場をクビになって職探しのために東京に戻る新幹線の中でも、あまり気分が重くならずにすみました。ありがたいことです。

08/18 霧越邸殺人事件           綾辻行人 新潮文庫
     文庫本にして700ページ。カヴァーに入り切りません。こんなに厚い文庫本読んだのは、バルガス・リョサ以来でしょう。通勤鞄にドストエフスキーを入れて会社に通っていたOL時代がとても懐かしくなりました。
     とても興味深くかつ順序よくそして滞りなく人が死んでゆくのですが、なんとなくこの内容にしては長すぎるような気がしました。でも、決して面白くなかったわけではないのですが、とにかく長いと感じました。

08/19 風のかたみ             福永武彦 新潮社
     世田谷区笹塚で購入し、愛知県の自動車工場で前半を読み、後半を岩手県の某工場で一気に読み終えました。荷物が重くなったのはこのハードカヴァーのせいだと思います。
     途中からの展開が急で裏をかかれるようなおもしろさがありました。さすがモスラの台本を書いていた方だとつくづく思いました。

08/25 迷夢 Vol.10
     来日してすぐ招待された都内某所の新婚家庭でいただいた本。『すずめ』『つきあい事始め』『寂しがる唇』の順に面白かった。

08/29 色ざんげ             宇野千代 新潮文庫
     作品は少ないが、宇野千代にはハズレがほとんどない。この作品は『おはん』よりも面白かった。なんかぜんぜん古さを感じない。きっとそれは宇野千代という存在自体が恒久的なのだと思う。もう亡くなったがこの人とお話しできるのであれば、やらなくなった麻雀やってもいいと思えるほどです。

08/30 半生の記              松本清張 新潮文庫
     この方は大器晩成の見本としてよくあちこちで引き合いに出されるようですが、これを読むとそう苦労して作品を作り続けていたわけでもなく、ただ生活に追われていて、すこし余裕が出来たところでこういった世界に入った結果、あれほどまでに品質の高い作品を作り続けたのだろうなと思った。
     苦労はむちゃくちゃしてるしひねてもいるのだが、それが全然作品製作とは違う部分の苦労なので、ある種製作する立場に対する目標や執着がなく、作品の品質だけにこだわり続けることが出来たのだと思う。いい意味で満足することのなかった人だと思う。

平成10年8月の1等賞

08/29 色ざんげ             宇野千代 新潮文庫



平成10年8月の2等賞

08/10 武州公秘話             谷崎潤一郎 中公文庫



平成10年8月の次点

08/30 半生の記              松本清張 新潮文庫



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