よいこの読書日記−平成12年02月
読んだ本
02月03日 ブッテンブローク家の人びと(下)       トーマス・マン   岩波文庫
02月04日 ピアッシング                   村上龍      幻冬舎文庫
02月11日 同じひとつのドア                ジョン・アップダイク 新潮文庫
02月12日 風と拳 小説・大山倍達〈修行編〉      大下英治    廣済堂文庫
02月19日 伝奇集                        J.L.ボルヘス   岩波文庫
02月22日 拳豪伝                        津本陽     講談社文庫
02月25日 人生論                       トルストイ     新潮文庫
02月25日 龍の子太郎・ふたりのイーダ          松谷みよ子  講談社文庫
今月の順位


02月03日 ブッテンブローク家の人びと(下)       トーマス・マン   岩波文庫
 なんかね。別に家柄捨てて落ちぶれたって別にかまわないじゃん、って気になった。でもそんな風に開き直ったらお話として成立しないんだろうなあ。でも、三冊合わせてみればよくできた一流の長いお話だと思う。ええ仕事してはるなあ、トーマス・マンって。
02月04日 ピアッシング                   村上龍     幻冬舎文庫
 よくできてます。怖い話の筈なのに笑えるのはどうしてでしょう? 島尾敏雄の『死の棘』みたい。『死の棘』に関しては、笑える、と言う私の意見に同意して下さる方はあまりいらっしゃらないので、自分の感覚に懐疑的になったりもするのですが、この作品は私以外の皆様も結構笑って読んでいらっしゃるのでは、と思いますけどどうでしょう?
02月11日 同じひとつのドア                ジョン・アップダイク 新潮文庫
 どうもダメだ。カーヴァーもそうなんだけど、こういった感じの現代米国珠玉の短編、みたいなのはどうもハマらない。それは私が現代米国と言うものにある種の嫌悪感を感じているせいもあると思うが、現代米国、と言うものを定義してみろ、と言われてもおいそれとそんなややこしいことは出来るはずもなく、そうそういつまでもはっきりした米国という朧気な属性区別を基準に差別し嫌っててもいられないので、次に読む現代米国ものは襟を正して読むことにします。私は今年、米国に対する偏見を極力なくすようつとめることにしました。
 でもなんかこれ、川端康成の初期の短編を読んでいるような気がした。
02月12日 風と拳 小説・大山倍達〈修行編〉      大下英治    廣済堂文庫
 実は、私は一応、大山倍達の曾孫弟子に当たります。だから、当然この人の伝説については名作漫画『空手バカ一代』を読んだり、師匠から直接教わり感じたりするものとかからの予備知識がありますので、今回はきっと大下英治の藝を楽しむ、と言う形になるのだろうな、と思ったのですが、それは大きな間違いでした。
 大山倍達総裁、やることなすことめちゃくちゃです。このめちゃくちゃぶりが私も含めて多くの男を引きつける魅力のひとつなのでしょう。きっとこの人は誰が書いても面白いんでしょう。
02月19日 伝奇集                        J.L.ボルヘス   岩波文庫
 ほとんどバンコクに出てくるときのバスの中で読んだが、かなり頭を使った。そのボルヘス特有の頭の使わせ方具合が私にとって凄くここちよくはあるのだが、くそ暑い熱帯で読む本ではない、と言う結論に達した。冷房の効いた図書室で読むのがベストだと思う。
02月22日 拳豪伝                        津本陽     講談社文庫
 大山倍達総裁もめちゃくちゃでしたが、この和尚もかなりめちゃくちゃです。一応ストイックな時期もあるのですが、全体的にめちゃくちゃな印象しか残らないのは何故でしょうか?
 読みながら私はなんかこんな風に人間味溢れるめちゃくちゃさを兼ね備えた時代小説しか読んでいないことに気づきました。このままだと自分の仕事に悪影響が出ること請け合いです。
 今度は読んでて痛くなるくらい全面的にストイックな時代小説を読むべきだと思いました。
02月25日 人生論                       トルストイ     新潮文庫
 いい作品をのこす方に好き勝手なこと喋らせてはならない、と言ういい見本。だいたいこの手の人は言いたいことをまとめたり、整理したりするために作品を編んだりするのだろうから、言いたいことを言わせたらあちこちに矛盾点が出てくるのは明らか。
 しかもその矛盾点が勢いある理屈で埋められてどこが矛盾だったか解らなくなるのだから更にタチが悪いです。なんかレイプされたような読後感。
02月25日 龍の子太郎・ふたりのイーダ          松谷みよ子  講談社文庫
龍の子太郎
 ドラゴンボール的な話ではあります。が、しかし、読後はなんとなく政治的に左、って感覚が残ります。なんか物語的には腑に落ちるんですが、太郎のモチベーションに若干納得がいかないような気もしました。
 まだ私が今の年齢の三分の一にも達しない頃、長崎県西彼杵郡多良見町白石家の隣に住んでいた実の叔父がこれを布団に横になったまま朗読してくれたことがありましたが、途中で眠くなって寝てしまいました。叔父さん、ごめんなさい。
 でも、最後まで全部聴いていたらトラウマになったかもしれません。このお話はそんな話のような気がしました。
ふたりのイーダ
 これはSFなんですが、どうやら原爆ものとしての側面しかクローズアップされてないような気がします。戦争は戦争で戦死者は原因が核だろうが地雷だろうがなんだって同じだと思うんですが、原爆を扱ったものだけが評価の基準が全く違っているんだと解説を読んで納得がいかない気がする昨今の私です。
 解説無視して読むと単純にいいSF童話だと思いました。

平成12年02月の順位
一等賞
10月11日 ブッテンブローク家の人びと(上)       トーマス・マン    岩波文庫
01月17日 ブッテンブローク家の人びと(中)       トーマス・マン    岩波文庫
02月03日 ブッテンブローク家の人びと(下)       トーマス・マン   岩波文庫
弐等賞
02月19日 伝奇集                        J.L.ボルヘス   岩波文庫
次点 
02月04日 ピアッシング                   村上龍      幻冬舎文庫
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