よいこの読書日記−平成12年05月
読んだ本
05月06日 伊豆の踊り子・十六歳の日記        川端康成     講談社文庫
05月09日 平凡                       二葉亭四迷    新潮文庫
05月15日 スキャンダル                  遠藤周作     新潮文庫
05月22日 ハムレット                    シェイクスピア     新潮文庫
05月23日 赤目四十八瀧心中未遂           車谷長吉     文芸春秋
05月25日 ある小倉日記伝                松本清張     文春文庫
05月29日 この一冊でわかる 20世紀の世界文学     新潮四月臨時増刊
今月の順位


05月06日 伊豆の踊り子・十六歳の日記        川端康成     講談社文庫
 ロリである。とにかく幼女趣味である。『伊豆の踊り子』にしても、『篝火』にしても素晴らしく徹底して演出されたロリータ・コンプレックスを感じる。しかもそれは間違いなく純度が高い天然のロリである。
 川端康成はこうしてどの男の中にも少しはあるロリータ願望を自然に作品化することによって国際的に認められたのだと思う。そのせいかジジイは嫌いらしく、『十六歳の日記』では何の虚飾も作為もなく血の繋がった祖父を見事に汚く書き出している。ジジイ嫌いも天然のようだ。
05月09日 平凡                       二葉亭四迷    新潮文庫
 おもしれえじゃないかこれ。
 おそらく四迷というのはもともと実験的な人で、その四迷が更に実験的なことをやろうとして事実を俗に垂れ流しながら自叙伝的に自己を語ってゆくのだけど、何故かその方法が壺にはまる。結果的に失敗しているようなのだがツボに入ればそんな事はどうでも良い。
 それにこの作品、明治後半の作品とは思えないほど文章が現代的に自然だ、『万延元年のフットボール』以降の大江健三郎よりは間違いなく読みやすい。あと、作中での悪態のつき方が私的に素晴らしいと思った。島田雅彦以上だ。最近の素敵な掘り出し物である。
05月15日 スキャンダル                  遠藤周作     新潮文庫
 最後まで読み終わってオチが発覚して、なんやこれなめとんのかコラと言う気分になった。がしかし解説まで読み進むと、オチのところを寝ぼけながら読み進めていたことが判明。今まで文庫本の解説は何のために付いているのか謎だったが、こういうときのために解説があるのだと思い妙に納得した。
 内容はとても面白い。読んだこともないのに山田詠美が凄く嫌いで貶す某王立大学留学生が遠藤周作が好きで凄く褒めていたので、何となくいやで、この人の長いものには手を着けていなかったのだが、ちょっと考え直した。
 今回のこれは自虐的に笑いを取る姿勢がまっとうでとても良かったです。本をくれた旅行者の方、有り難う。
05月22日 ハムレット                    シェイクスピア     新潮文庫
 デンマーク王は以前の王が死ぬととっととお妃をたらし込んで王の座に納まってしまいます。彼はきっといい男だったのだとは思いますが、そこには触れていません。
 前回読んだ『リヤ王』といい、シェイクスピアはこの手の女たらしには冷たいです。おそらく実生活でもてなくて何度もいやな思いをしたのだろうな、と私は推測しました。
05月23日 赤目四十八瀧心中未遂           車谷長吉     文芸春秋
 これ面白い、と長らく皆様に言われていて読まずにいたので今回やっと借りて読んだのですが面白いです。アヤちゃんが何か誰もの想い出の中に必ずいそうな感じの、エッチでイノセントな娘と言った感じなのがいいです。題に未遂、って書いてあんのにもかかわらず、どうなるのかと思って最後までどきどきです。
05月25日 ある小倉日記伝                松本清張     文芸春秋
 なんか同パターンの短編が続く。中上健次の初期短編みたいだった。でも読み出すと止められなかった。
05月29日 この一冊でわかる 20世紀の世界文学     新潮四月臨時増刊
 平成三年発行。五年以上ちょっとずつ読んでた。古本屋で買ったのだが、古本屋に出た途端、大学の図書館にあったやつがなくなってたので、きっと誰かが図書館からギッて、売ったのだろうと思う。
 そう言う紆余曲折を経て今この本は大首都クルンテープマハーナコーン隣県某所の私の元にあるのだが、何となくそう言う風に遇されるのがこの本らしいといえばこの本らしい。
 で、内容は二〇世紀の主要な視覚的言語藝作者五十六人の作品を年代順に集めただけなのだが、かなり広く網羅してあるため、いっぺんに読むとかなり辛い。そもそも私はアルツのため、短編という形式を読むのが苦手だ。覚えちゃいない。
 まあ軽く内容を説明するだけでも大変なので、とりあえず私はこの本を読んで何度読んでも内容が頭に入らなかったジョィス(アイルランド)の『土』ヘミングウェイ(アメリカ)の『殺し屋』フォークナー(アメリカ)の『納屋を焼く』ボルヘス(アルゼンチン)の『死とコンパス』の内容がやっと頭に入り、いろんな表現者の中で回教ユダヤ教的な主題が重要であることを知り、尹興吉(韓国)クンデラ(チェコスロバキア)ウォー(イギリス)マンスフィールド(イギリス)は初めて読んだけど楽しかったからまた違うのも読んでみようと思った。
 

成12年05月の順位
一等賞
05月23日 赤目四十八瀧心中未遂           車谷長吉     文芸春秋
弐等賞
05月29日 この一冊でわかる 20世紀の世界文学     新潮四月臨時増刊
次点 
05月09日 平凡                       二葉亭四迷    新潮文庫
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