よいこの読書日記−平成13年08月

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読んだ本
08月01日 
08月02日 赤と黒                       スタンダール 角川文庫
08月03日 曾根崎心中 冥途の飛脚 他五篇 近松門左衛門作 佑田善雄校注 岩波文庫
08月06日 雁                          森鴎外 岩波文庫
08月11日 追放と自由                     李恢成 講談社文庫
08月20日 
08月22日 楽しみと日々                    プルースト 福武文庫
08月23日 二十日鼠と人間                  スタインベック 新潮文庫
08月24日 
今月の順位


08月01日 
『海と戦うジジイ』アーネスト・ヘミングウエイ サーンサーンブックス株式会社(日本語訳は『老人と海』新潮文庫)
(上記の書名は原文をノリで日本語に訳したものです↑。検索エンジンで探したりすると徒労に終わりますのでご注意下さい)
 北部国境へ行って帰ってくる途中にバスの中に忘れてきたので新しく買いました。ついでに全部読みました。読むのは二回目です。辞書は使いませんでした。比較的お話の流れはよく解りました。もしかしたらわたくしはかなりタイ語読解能力が向上しているのかもしれません。しかしよくよく考えてみると、この本、日本語で何度も読んでいるので、単にお話の流れを覚えているだけなのかもしれません。

 そういった基本前提をもとに考えてみると、わたくしのタイ語読解能力というのはどの程度なのか更にさっぱり解らなくなってきました。

08月02日 赤と黒                       スタンダール 角川文庫
 ジュリアン・ソレルになりたいのです。奥様お嬢様方が性衝動でついつい打算を忘れるようなそんな美少年になりたいのです。と、いうより美少年であるが故にその能力を過大評価されてしまいその過大評価の果てに新たなご都合主義的打算を組み立てて奥様お嬢様方が性衝動を正当化してしまうようなそんな素敵な貧乏人になれたらいいなあと心から思います。

 でもアルツ著しい俺のことですから、ジュリアン・ソレルのようにいろんなものを丸暗記して朗読して見せ、奥様お嬢様方始め殿方達の信用を得ることなど出来そうにありません。最近深刻ですこのアルツ。自分がアルツであることを忘れるくらいのアルツです。

08月03日 曾根崎心中 冥途の飛脚 他五篇 近松門左衛門作 佑田善雄校注 岩波文庫
 これ、浄瑠璃台本なのですが儂は浄瑠璃というものを見たことがありません。なのでその浄瑠璃という表現形態の中で成立しているお約束事などまったく知りません。一応この本はそのお約束事までご丁寧に台本の中に表記してありますが、儂にとってはそんなもの全然役にたたんのです。一度でも浄瑠璃と言うものを見たことがあるなら具体的な状況を想像のしようもあるのですが全くないのでどうしようもないのです。

 仕方なく儂はNHKの人形劇『プリンプリン物語』を思い出しながら読んでいたのですが、それに出てきたヘドロというS系統の女王様的な女性がやがて儂の頭の中で『タイムボカン』のドロンジョ様に変わってしまいました。それはきっとそういう風にイメクラ的に無茶な妄想の持っていき方をした儂に非があるのでしょう間違いなく。

 妄想は妄想でそれはそれで楽しいのですがしかし、このお話に出てくる女性はM系の方ばかりなのでそんな妄想は邪魔で仕方がありません。でもそれは誰のせいでもなくそんな妄想をしてしまった儂のせいなのです紛れもなく。

 この本、近代以前の日本語で書かれているので非常にリズミカルですいすい読み進めることが出来ます。でも、言葉の意味自体がなかなか頭に入らないから結局読み直さなきゃならなくなって凄く時間がかかるんですけどね。久しぶりになんか変わった日本語の読み方をしたような気がしました。

08月06日 雁                          森鴎外 岩波文庫
 昭和二十七年発行の岩波文庫です。何度も言うようだが古本で売るのなら書き込みするのはやめろ。しかも中途半端にするから買うとき発見できなかったじゃねえかよ。一番最後のページに、一九五三年二月十六日遠藤書店より求む 七日町、とか意味のないこと書きこんでんじゃねえ。

 でもたぶん持ち主の方はどう考えても亡くなっていると思うので許す。亡くなった方に悪態ついちゃいけないよね。

 さて、内容なのですが明治時代だろうが十九世紀露西亜だろうが、高利貸しというものは場所と時間を選ばず普遍的に儲かるお仕事のようです。まあ、場所と時間を選ばないのですから現代においてもたくさんのお姉ちゃんがレオタード着てブラウン管の中で踊るくらい普遍的に同じなのです。

 しかし、現代のように組織であるならいざ知らず、一人で高利貸しになると言うことは凄くたくさん負のエネルギーを使うのだなあ、と特にこの作品においてはそう感じました。

08月11日 追放と自由                     李恢成 講談社文庫
 どうもどうもーウエノム依子でーす。
 チョン石でーす。
 あ、
 なんやねん。
 ネタ忘れた。
 なんやて?
 この漫才の台本忘れてもうた。
 そないしてすぐ忘れんねん日本人は。どないすんねんあんたこの先この漫才。
 思い出せへんから謝るわ。
 おう謝れ謝れ、過去の事はきっちり謝ってしまえ。
 よおし戦時中まで遡って昭和天皇の代わりにあたしが謝ったるわ。
 ちょい待ちいな。
 なんやせっかく人が謝ろ思てんのに。
 昭和天皇の代わりになんか謝ってもらわんでもええわ。
 ええのん?
 そんな昔のこと、あんたは関係あらへんからな。遡らんでもええて。
 あら心広いお方やねえ。
 でもな。
 なんやねん。
 豊臣秀吉のかわりに謝ってくれ。
 四〇〇年以上も遡らなあかんのかい。
 
 と言うようないささかサプい夫婦漫才が作品中にあればいいのにと思えるほど、重苦しいお話だった。在日朝鮮人の苦悩というのはわかるのだけど、どうもその苦悩に物語が押されて逆効果になっているような気がした。読み始めてすぐこの本を読むのは二回目だという事に気づいたが、結局そのことを忘れるほど印象に残らなかったと言うことなのか、それとも忘れたいと思うほど重苦しかったのか、自分でもどちらかよくわからない。

 作品内容を印象に残すために物語の流れと人物の苦悩の調合具合は十分吟味されるべきだと思う。

 もしかしたらこのふたつのボルテージは比例しなければならないのかもしれない。

08月20日 
『困ったお友達』ジョン・スタインベック  サーンサーンブックス株式会社(日本語訳は『二十日鼠と人間』新潮文庫)
(上記の書名は原文をイキオイで日本語に訳したものです↑。検索エンジンで探したりすると徒労に終わりますのでご注意下さい)
 物語の舞台全体が霧に包まれています。このあやふやな感覚は今年源氏物語を読んだときの感覚によく似ています。あのときは登場人物の関係とか肩書きとか時代背景的な専門用語がまったく頭に入らずあやふやなまま適当な判断をしながら読み進めていったのですが、今になってもそれでよいのか著しく不安になります。

 でも最近はこんな素敵なメールマガジンなんかがあったりするから素晴らしくそんなあやふやさを他人にフォローしていただくようなことも出来るんですけどね。他力本願いえーい。

 しかしこの本に関するあやふやな感覚の理由は間違いなく辞書を使わずに読んだからです。『海と戦うジジイ』を辞書を使うことなく読み進め、ある程度理解できたからと言って調子に乗ったのがいけませんでした。登場人物の性別特徴も肝心な部分がかなりあやふやです。

 十年近く前に一度だけ日本語で読んだ本の泰語訳を辞書も使わずに読もうとしたことがそもそもの間違いでした。私が悪かったのですごめんなさい泰語を舐めすぎていました。そういったワケで小学生の時にむずかしい漢字が多く更にふりがながふっていない本を読んだときと同じような感覚が味わえて貴重な体験でしたこの本を読み勧めるという行為は。

 またひとつ自分が大人になったような気がしますが、三十二歳にもなって小学生に戻ってどうする、と自分で自分に突っ込むのは辛くなりそうなので止めておきます。

 とりあえず、レニーはジョージがとても好きでウサギに執着していることはよくわかりました。そして、わたくしの泰語読解能力が小学生未満だということもよくわかりました。

08月22日 楽しみと日々                    プルースト 福武文庫
 初めてのプルーストさんです。面白かったです。主に社交界のことが書いてあります。社交界というものはある程度生活の心配がなくて成立しているものです。だから裕福な人たちばっかり出てきます。そのひとたちは生活の心配がなくて裕福なのですから、みなさんいらん事ばっかり考えてます。

 多分毎日田んぼの草を取ったり、朝から工場でボール盤使って鉄板に穴を開けたりしていたら人はそんなにいらん事を考えたりしないと思います。生活基盤となる金銭を得るための生産活動は凄く健全だからです。健全な人はいらん事を考えません。

 そしてそんな風に不健全なことばっかり考えている社交界の人たちをプルーストさんは丁寧にほどよいいやらしさで書いてゆくのです。

 とりあえず今年いっぱい収入の予定がなく、蓄えを食いつぶすだけのある意味裕福なわたくしがしょっちゅういらん事考えているのはそういうわけなのだな、とこれを読んで改めて気づいた次第です。

 とりあえずわたくしはこの本を読んで、いらん事はほどほどにして日々生産的に過ごさなければならない、と言う教訓を得たような気がします。

08月23日 二十日鼠と人間                  スタインベック 新潮文庫
 そうかそうだったのか。

 三日前まで、あたしのまわりを包んでいた霧がすっかり晴れてゆきます。

 ここがどこなのかそして誰が誰で誰が死んだのか全てがはっきりしてゆくのです。

 何て素晴らしいのでしょう生まれてから初めて与えられたネイチヴ言語というものは。

 日本語万歳です。

 で、十年ぶりに明らかになったこの作品世界において十年前と違っていたのはあたしが可哀想だと思ったのはレニーではなくジョージだったということでした。ジョージほんとに可哀想です。

08月24日 
『進歩の知識』コナチャーン アムヌワイサーン出版社
(上記の書名は原文を本能にまかせて日本語に訳したものです↑。検索エンジンで探したりすると徒労に終わりますのでご注意下さい)
 こうしてタイトルを和訳してみるとすげえ大層な本のように思えますが、中身のほとんどが科学の歴史上重要な人物についてのクイズです。縦五センチ横十センチほどで九十六頁。定価六バーツ。マッカサン駅の売店で購入しました。間違いなく子供向けです。

 スタインベックの泰語訳でやられまくったので極端に易しい本に逃げました。しかし、文章は平易でも、知らない単語は結構あります。当然それらは見ないことにしました。

 この本、すげえツッコミどころが盛りだくさんなのですが、とりあえず二点ほど突っ込んでおきたいと思います。

 まずは七〇頁。



問題九九:潜水艦を発明したのは誰でしょう?

答え:アメリカ人のジョン・ホールランド

問題一〇〇:機関車を発明したのは誰でしょう?

答え:イギリス人のヨース・スティフェンソン

問題一〇一:三輪自転車を発明したのは誰でしょう?

答え:タイ人のルアン・ポンソーポン


 誰?

 というよりこれはギャグ? それとも微笑ましい愛国心? 読んでいてすごく判断に困ります。困ったのでしょうがなくサヌック!で検索したのですが、ルアンさんもポンソーポンさんもまったくひっかかりません。もしかしたら実在しない人物なのかもしれません。謎のままです。

 次に九二頁からなのですが、このあたりではずっと最新政治状況がクイズとして出題されています。ちなみにこの本、出版社の連絡先は書いてありますが、いつ発行なのかはいっさい書いてありません。

 アナン首相からチュアン首相にバトンタッチ、って写真が脈絡もなく載ってましたのでそんなに遠い過去じゃないと思います。だから、これさえ覚えておけばこの国の子供達も立派な国際人ですね。



問題三一:現在のフランス大統領は誰?

答え:フランソワ・ミッテロン氏

問題三二:現在のアメリカ大統領は誰?


答え:ビル・クリントン氏



(途中略)



問題四〇:現在の日本の首相は誰?

答え:鈴木氏

 誰?

成13年08月の順位
一等賞
08月02日 赤と黒                       スタンダール 角川文庫
弐等賞
08月23日 二十日鼠と人間                  スタインベック 新潮文庫
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08月01日 
07月↑
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