二十一時に家を出て、二十二時には店に着き、店を出たのは午前二時、思ったよりも高価な会計。半分以上姐さんに、ご馳走になり店を出て、寒い懐手を入れて、かぞえる全額三十バーツ。
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なんか船戸与一が来るから、出迎えに行けと言われて指定の喫茶店に行く、喫茶店の駐車場には自分同様売れない視覚的言語藝を製作している面々、もしくは作家志望と言われる人たちが集まっているようだった。知っている顔も何人かいる。全員九州の人間のようでどうやらこの喫茶店は九州にあるらしい。そしてミリタリー調に塗装されたジープが派手に駐車場に乗り込もうとした瞬間、運転席でハンドルを握る船戸与一の顔が見える、凄くおそろしく怖そうな顔だ。皆私と同じように感じたのかジープが近づいてきた途端、蜘蛛の子を散らすように退散し、残ったのは私と数人だけだった。車から降りた船戸与一は真っ先に私の顔を見た。どうやら他の人間は視線をそらせたらしい。私は仕方がないので船戸与一に向かってにっこりと四十四万ドルの笑顔を作る、船戸与一もすぐに笑顔を返すがその笑顔も相変わらずおそろしく怖そうなので、弱ったことになったなあ、とおもう。
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