藝道日記。(平成 12/10/15)
平成十二年十月十五日(日)。

   
 二日ぶりに港町十四番地号出動。この二日間部屋から出たのは一階ミニマートのみ。そう、食料が無くなったのだ。取り敢えず工場裏ジャングル上集落の雑貨屋でRCコーラ五バーツ飲みながら何を買うか考えるが結論は出ず。

 飲み終えて運河沿いまで走り、パン屋を覗くが、お気に入りのシュークリームはない。私は迷ったときの習慣通りすぐに市場へ。そして市場到着。で、めくるめく食材の前に消費者中枢即破壊される。そうなのだ、破壊される直前、刹那的に脳裏をよぎったのだが私は南瓜と葱だけを買うつもりだったのだそうなのだ。しかしもう何も考えられなくなったのだ。はじめちゃんはママとヤルのだ。バカボンはパパとヤルのだ。気持ちがいいからこれでいいのだ。
   


 私は幽体離脱して毀れたバカを背後から観察することにしました。バカは取り敢えず市場内に侵入しあちこちに笑顔を振りまいています。何を買うという様子もありません。そしてその後外に出ておそらくは顔なじみであろう八百屋でおばちゃんが叫ぶ、二束五バーツ、の声に心動かされているようです。

 バカは葱一束とジャガイモを一個買いました。五バーツの値段に感激しているようです。その後バカは長茄子に手を伸ばします。しかし何故か長茄子一本五バーツだと言われます。金は払っていますがなんとなく納得していないような感じです。

 おそらく過去に一本二バーツで売って貰った時の事を回想しているに違いありません。そしてバカは再び市場内に入っていきます。そして鶏屋の前で立ち止まりました。少し険しい表情を見せています。
 

   
 多分以前骨抜き鶏足がらみで言葉責めを受け、市場中に辱めを受けたことを思い出しているのでしょう。バカは取り敢えず各パーツ毎に並んだ鶏肉の中から、キロ十五バーツの鶏ガラを指さしました。頸から上、頭までと、ケツ肉が付いている優れものの鶏ガラです。

 鶏屋に八バーツ払ったバカは鶏ガラの入った袋をぶら下げて再び市場内を巡回し、入口に戻ります。そして黄色い豆腐を購入しやがりました。炒め物向きの、食紅で漢字が書いてあるヤツです。それだけ買うと、バカはとっとと港町十四番地号に跨りました。
   


 アパートに戻るとバカは一階ミニマートで葡萄を分けて貰い、しばらく部屋で毀れたまま作業をしています。しかし、一応七輪に火をくべて鍋の中に鶏ガラを入れるてしまうとと甘いものが欲しくなったらしく更に一階に降りました。そして飴なんか買ってやがります。

 そこですかさず飴をなめて、ようやく毀れた頭の自然修理が完了したらしく、我に返った。どうやら脳に糖分が回っていなかったのが毀れた原因のようだ。
 

   
 ミニマートには何故か、さっきまで居た奥様がいらっしゃらず、警察署ご勤務の旦那さんが店番をしておられた。旦那さんは南瓜のココナッツ甘煮を私に下さった。全部くえ、とおっしゃった。
 

 わたくしは何か南瓜について記憶の中で引っかかる部分があるのを自覚しながら、それでもそれが何か思い出せず、全部食った。そしていただいた後の食器を洗おうと思いミニマートのトイレに行った。
   

 
 するとそこでわたくしが見たのは盥いっぱいの魚と、それの鰓と内臓を切り分けている奥様の姿だった。あら奥様こんなところにいらっしゃったのですかところでこの魚はやっぱり干物用? とわたくしが聞きますと奥様は無言のままにこやかに笑顔を作り頷かれました。

 売って下さいよ二匹ほど、とわたくしはいま七輪に木炭をくべたまま部屋を出てきた事を思い出して、奥様にそう申し出た。焼き物の準備は万端なのだ。奥様は、二匹とは言わず三匹くらいもっていかんかいボケ、とおっしゃった当然かなり丁寧な物言いの泰語で。
 

   
 と言うわけで夕飯は焼き魚塩焼き二尾、ジャガイモと葱卵黄色豆腐の炒め物、ジャガイモと葱黄色豆腐の味噌汁でした鶏は茹でて浮いてきた脂を炒め物に使いました。でも、こういう風にヴィジュアル的に皆様に楽しんでいただけるような食事内容の時に限ってデジカメが壊れてたりするのだ。残念。
   

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