よいこの読書日記−平成12年08月

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読んだ本
08月04日 幽 かすか               松浦寿輝    文芸春秋1999年9月号
08月06日 自負と偏見(上)            オースティン     新潮文庫
08月09日 母子相姦 背徳の恥蜜 美姉妹恥肉の交姦 砂戸増造    グリーンドア文庫
08月14日 自負と偏見(下)            オースティン      新潮文庫
08月15日 つゆのあとさき             永井荷風     岩波文庫
08月16日 脱走と追跡のサンバ          筒井康隆    新潮文庫
08月17日 ブンとフン                井上ひさし    新潮文庫
08月18日 馬鹿一                  武者小路実篤  新潮文庫
08月19日 四畳半色の濡衣            野坂昭如     文春文庫
08月24日 夢夜現世 掌編集T          小田切譲    オールスパイス
08月19日 
08月30日 ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学   E.フッサール    中公文庫
今月の順位


08月04日 幽 かすか               松浦寿輝    文芸春秋1999年9月号
 なんか私の名前が掲載されているらしいので、誰かくれ、と言ったら優しい方が送ってくれた本で、たまたまそれに掲載されてた作品。とりあえず生と死の危うい境界線上を上手く書いているのだが、死に対する恐怖みたいなものが希薄な気がした。それはきっとこの作品、語りの部分が一人称で書かれていないからだと思う。一人称で書いたらもっと傑作になったかもしれない。三人称の語りはなんか語り手があの世もこの世も全部わかったような感じでなんとなく物足りなさがあるが、結論としてはその寸止めに近い物足りなさが面白いと思ったので、結局三人称でも良かったのかもしれない。
 
08月06日 自負と偏見(上)            オースティン     新潮文庫
 読むまでは外国のオヤジが書いた思想書かなんかだと思ってたのだが、女流が書いたつくり話だとわかって拍子抜け。いかに日頃から自分が思いこみに基づいて生活しているかがよくわかった。で、しかも結婚小説。さらに十八世紀の作品。でも結婚に対する価値観は今とほとんど変わらないような気がした。
08月09日 母子相姦 背徳の恥蜜 美姉妹恥肉の交姦 砂戸増造    グリーンドア文庫
 某王立大日本人留学生の間では、わたくしのことが、エロ小説家、という噂になっているようです。はじめて聞いてから二年ぐらい経つけど、また最近同じ話を聞いたのでかなり根強い噂のようです。作品をご賞味いただいてそう判断されるなら、ありがとうございます、の一言でも言いますが、誰もお客様になっていただいていないようなので、誰かわたくしを嫌っている方がいらっしゃるのでしょう。
 まあ、せっかくそういう噂が流れていることですし、今後その期待に応えることも必要ではないか、と謙虚に受け取め今回いわゆるエロ小説、と言われるものを読んでみたのですが、これがまた、専門用語と伏せ字が多くてよくわかりません。お××こ、お×ね、ドミナ、とか言われても全然わからないのです。更に終盤、十二歳の小学生処女が、「由紀、裸でお×ねを弄るわ!」と叫んで自慰行為に至る所などは、呆れて爆笑もできませんでした。お×ね、と言うのが、おかね、とか、おふね、なのかと思ったほどですしゅらしゅしゅしゅ。
 きっとこれ書いた人は睡眠不足でハイになって書いたのだと思います。よくイタコになるわたくしとしては凄く気持ちが分かります。本当におつかれさまでした。しかしこの藝風誰かに似ている、と思ったら、なんのこたない、友人の犬様が昔Gダイアリーと言う雑誌で連載していた『チェラドン雌狐物語』と同系統のノリなんじゃん。なあんだ。
 ところでこの作者は、さど ますぞう、と読めばいいのでしょうか? それとも、サド マゾ?
08月14日 自負と偏見(下)            オースティン      新潮文庫
 ええ俗。凄く現代的に俗。出てくる人全部俗。これで十八世紀のお話だとお。信じられません。私が十八世紀に抱いていた神々しい幻想は見るも無惨にうち砕かれました。愛以外に結婚相手としての条件いう概念があると、こんな風に全然今と変わらず俗になっちゃうのでしょうか? そしていかにも結婚で締めちゃえ、と言った感じのハッピーエンド。もしかして広瀬香美の藝風ってこれと同じ?
08月15日 つゆのあとさき             永井荷風     岩波文庫
 ゆうてみたらキャパクラ嬢をラブホに連れ込んで、ああだこうだというような作品。語りはキャパクラ嬢の視点寄りだが、それがマッチョ的に中途半端で、そこのところがなかなか明治人らしい。
08月16日 脱走と追跡のサンバ          筒井康隆    新潮文庫
 これを全部計算して製作しているのなら筒井康隆は凄い人なのだろうが、よくよく考えてみてやはり全て計算しているのだろうから筒井康隆はすごい。なんて礼儀正しく格調高い滅茶苦茶なのだろう。
08月17日 ブンとフン                井上ひさし    新潮文庫
 売れないフン先生の生活には他人事と思えないものを感じた。
08月18日 馬鹿一                  武者小路実篤  新潮文庫
 私の師匠である佐和田亮二師範の家にあった本なので、古本屋で探して買いました。師範は本とかそんな物というか、理屈を必要としない思想を確立されている方で、トラウマ以上の大きな影響を受けたので、ずっとこの十年間、そんな師範が読む本がどのようなものか気になってはいたけど読んではいませんでした。これも師範と同じように見事に理屈を必要としない本です。画家、書家、詩人といろいろな藝道に精進する人間が出てくるのですが、馬鹿一はその中でも特筆すべき価値観と姿勢を持つ人間でです。しかし、二年くらいで世間に評価されてしまうのはいただけないです。もっと破滅的になるのを期待してたのになあ。ところでこの作品の編集者って、もしかして坂本龍一のお父さん?
08月19日 四畳半色の濡衣            野坂昭如     文春文庫
 これがエロだとしたらこれこそ高品質のエロ、エロの見本です。九日に読んだヤツより遙かにエロだと思いました。しかも藝あるエロ。品あるエロ。こんな素晴らしいエロなら警察が介入してしまう気持ちも分かります。野坂昭如って凄いなあ。エロだけど。

08月24日 夢夜現世 掌編集T          小田切譲    オールスパイス
 『呼び水』が一番おもしろかったです。
08月19日  (←出版社リンク)
 こちらでむちゃくちゃ人気があるトークショウ藝人、ウドム・テーパーニットの舞台の記録。辞書を使わずに読みました。当然そのせいで内容がちゃんと頭には入ってません。加えて、語源中国語だろうと思われるスラングも多いです。まあいってみたら先月読んだスタンダールくらいの読後認識だと思います。ええ、そんなものなんですわたくしの集中力と泰単語の語彙なんて。しかしこれをちゃんと意味を把握しながら読んだら、『パルムの僧院』をちゃんと読むくらいの手間ですむ訳はありません。ええ、ちゃんと読まなければならないのだろうなと言うことはわかっているのですが、それに費やす時間とわたくしの生活経済を検討した結果、あらためて頭が痛くなりました。が、どぅゆらいくぽっぷみゅうじっく? のギャグの間、は泰語を文字として視覚的に鑑賞しても良く伝わりましたので、おそらくこの人のライヴはとても面白いだろうと言うことが予測されます。Do you like pop music?
08月30日 ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学   E.フッサール    中公文庫
 ええ言いたいことは簡単で要するにいわゆる思いこみのようなものをチャラにして考え直さんと、いつまで経っても文系は理系に比べて狼少年に過ぎない、と言うことのようです。そうだったと思います。少なくとも私はそう読みました。でも凄く乱暴な読み方かもしれません。何度も何度もいろいろと突っ込み方を変えて同じ事を言ってて、それがまた私が普段考えてることと近いので非常に不安なく斜め読みできます。あまり集中力もいりませんでした。ちなみにこれを読みながら参考文献として『文学部唯野教授』筒井康隆著 岩波書店同時代ライブラリーの第五講及び、『哲学者たちの考えたこと』嘉吉純夫 斉藤隆共編 エルビスの第四章第四節を参考にしました。ずっと読み続けるとさすがに集中力が途切れます。頭に入れることを考えなきゃすらすら読めるんだけどね。


成12年08月の順位
一等賞
08月18日 馬鹿一                  武者小路実篤  新潮文庫
弐等賞
08月30日 ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学   E.フッサール    中公文庫
次点 
08月06日 自負と偏見(上)            オースティン     新潮文庫
08月14日 自負と偏見(下)            オースティン     新潮文庫
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