よいこの読書日記−平成12年09月

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読んだ本
09月01日 ただいま浪人                 遠藤周作    講談社文庫
09月02日 熊 他三篇                  フォークナー     岩波文庫
09月03日 白昼の死角                  高木彬光    角川文庫
09月07日 火星年代記                  レイ・ブラッドベリ  ハヤカワ文庫
09月07日 文学部唯野教授               筒井康隆    岩波同時代ライブラリー
09月08日 上弦の月を喰べる獅子(上)        夢枕獏      ハヤカワ文庫
09月10日 女人源氏物語 第一巻           瀬戸内寂聴  集英社文庫
09月14日 日米開戦(上)                 T・クランシー    新潮文庫
09月17日 モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関 落合信彦    集英社文庫
09月18日 凡庸な芸術家の肖像 上          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
09月19日 傭兵部隊                   落合信彦    集英社文庫
09月20日 上弦の月を喰べる獅子(下)        夢枕獏     ハヤカワ文庫
09月21日 女人源氏物語 第二巻           瀬戸内寂聴   集英社文庫
09月27日 日米開戦(下)                 T・クランシー    新潮文庫
09月30日 凡庸な芸術家の肖像 下          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
今月の順位


09月01日 ただいま浪人                 遠藤周作    講談社文庫
 良くできてます。構成も話の作りも。尾高修也さんゆうところの有機的につながって、というのはこうゆうような構成のことをいうのかもしれません。学ぶところは多くありましたが、なぜかどれくらいそのすばらしい感覚が続くかどうかははっきりしないような気がします。しかし月末に読んだなら今月の一等賞かもしれません。何かそんな感じがしました。
09月02日 熊 他三篇                  フォークナー     岩波文庫
 日本から遊びに来た大学生のお客様が買ってきてくれました。御礼に豚足を一キロほど買ってきて、ムール貝で炊き込みご飯を作って食いました。すげえフォークナー。この四つの短編製作するだけで、長編四つ分の集中力いるな。通常ならダラダラと書かなきゃならないとこをばすっと切り捨ててるからこんなに密度高いんだろうなあ。
 そういうわけで密度高いクセにいつものようにイカした手法で製作しやがるから、他の作品に違わず読みにくいです。読んでるときにラジオから井上陽水の『リバーサイドホテル』の泰語カヴァーなどという不思議で心誘われるものが流れてきて、ちょっと集中力を欠いたりするともう話についていけなくなります。しかし読んでから他のフォークナー引っ張り回して解説読みまくったり、新潮文庫の短編集に入ってる『赤い葉』を読み返したりしてしまうのです。
 初めて読んでからもう十年近く経つような気がするのですが、時折こう読み返したくなってその度に新しく目から鱗が落ちるのがフォークナーの藝的魅力のような気がしました。しかし、狩猟、ってこの作品に於いて凄く概念的に描かれてるけど僕にとっての狩猟、って何だろう?
09月03日 白昼の死角                  高木彬光    角川文庫
 驚くほど以前読んだ詐欺師のドキュメンタリー本とコンセプトが酷似してます。もしかしたらどちらかがどちらかをパクったのかもしれません。で、どちらかが面白いかというとこっち。それはこっちの方が虚構だからとかそういう問題ではなく、それを差し引いてもこっちが数段上です。これよんであらためてつくづくお金とか証券とか手形とかは怖いものだなと思いました。たとえ無収入でも財産資産が有形でなく、簡単には取引できない藝人というお仕事を選んで良かったとつくづく思いました。
09月07日 火星年代記                  レイ・ブラッドベリ  ハヤカワ文庫
 この作品が発表されてから五十年起った今、近未来小説だったこの話の中に出てくる時代なのです今はもう既に。で、それでいまこのようなことが地球や火星で起こっているかどうかといわれれば全然起こってません。まあ、国際政治諜報謀略関係に詳しい方に意見を求めたりすれば、それはあんたが知らないだけで起こってるんだよあちこちで、といわれるかもしれませんが。
 それで、結局五島勉的予言の書的な近未来小説としての存在意義は見事に否定されてしまったこの作品なのですが、それでも面白いです。近未来とかそういった概念なんて全然関係ないところでレイ・ブラッドベリの藝が生きています。初めて読んだけど面白いなあブラッドベリ。
09月07日 文学部唯野教授               筒井康隆    岩波同時代ライブラリー
 先月フッサールを読んだせいで、部分的ではなく全部読み返す羽目になりました。あらためて全部読み返したいほど面白いドタバタ喜劇なのですこれは。おそらく三度目くらいかな通して読むのは。
 この本、大体仕事場の比較的手が届くところにいつも置いています。普段ちょこちょこ拾い読みすることが多いからです。なぜかというとこれはある種学習参考書的な側面も持っている本なので、辞書のように使うのです。なら参考書としてはどうか、といわれるとこれもわかりやすく書かれていてすばらしいです。
 いつも思うんだけど、寿司食ってたらいつのまにか同時にピザを食わされてたとかそんな感じがします。その逆でもいいけど。
09月08日 上弦の月を喰べる獅子(上)        夢枕獏      ハヤカワ文庫
 宮沢賢治と仏陀ね。非常に興味深い組み合わせで引用とその変形も興味深い。ただし、夢枕獏の他の作品と同じ様な魅力があるかといえば、無い。宮沢賢治の引用とそれを変形したリフレインは、手法的には興味深いのだが、読んでて凄く違和感を感じる。
 どうやら私は夢枕獏に夢枕獏として夢枕獏らしい夢枕獏たるところを心のどこかで求めているようだ。仲間が愛読者なので、十年ほど前に仙台で記念撮影を御願いしたことがあるが、この作品と同じような違和感を雰囲気として持つ人だった。何かそう考えてみたら納得いくな。
09月10日 女人源氏物語 第一巻           瀬戸内寂聴  集英社文庫
 『源氏物語』の瀬戸内寂聴的サブテキストらしいです。それでもこれでひとつの独立した『源氏物語』のダイジェスト的内容でもあるらしいです。あるらしい、というのは実はわたくし、いまだかつて源氏物語というものを読んだことがありませんし、瀬戸内寂聴が書いた本を読んだこともありませんでしたので予備知識が無かったのです。そうして読むとええ、故にもうそれはそれで非常に集中力がいるのですすぐに誰が誰かわからなくなるから。何でこんなに誰が誰かわからなくなるのだろう? と思ったのですがよくよく考えてみると光源氏を始め出てくる人全部が全部に生活感がないからだという結論に落ち着きました。だったみんな恋愛ばっかりしててそのことしか考えてないみたいなんですもの。
09月14日 日米開戦(上)                 T・クランシー    新潮文庫
 よく調べて丁寧に作ってあるなあ。作り話なんですけどね。落合信彦の国際ノンフィクションノヴェルより格段に本物らしいです。今の日本でこれくらいいろんな事調べて作る人って誰がいるかなあ。とりあえず高村薫くらいしか思い浮かばないや。
09月17日 モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関 落合信彦    集英社文庫
 ええ、落合信彦の国際ノンフィクションドキュメンタリーです。文庫本で初めて出版されてから十五年間で実に三十七回も印刷されてやがります。十五年間の平均定価を三百四十四円として一回に四千四百四十四冊刷り、そのうちの九パーセントが印税として著者の収入になる、とかなり少な目に計算してみるとこの文庫本の売り上げによる収入だけで、わたくしがここで作品製作するために必要な生活費の実に十年分を稼いでいることが判明して、同じように視覚言語作品を生産している人間としてわたくしは、一日ほど軽い嫉妬にまみれました。ええ、ルサンチマン二十四時間耐久スタート、って感じです。
09月18日 凡庸な芸術家の肖像 上          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
 イタい。すごく痛い。最初は読みにくいのに途中からすごく時折出てくる言葉がいちいちツボにハマった。まるで自分のことを言われているみたいだ。読み進めていくうちに自分の行動パターンが十八世紀フランスに存在した俗的凡庸さにのっとっているような気がしてやりきれなくなるが、もしかしたら著者である蓮實重彦もそういった凡庸さを自分に重ね合わせて自虐的に製作していたような気がしてきた。
09月19日 傭兵部隊                   落合信彦    集英社文庫
 仕事がまとまったお金になったら某国陸軍特殊部隊に体験入隊しようと思い、エージェントと約束済の私にとってとても役に立つ情報でした。身体鍛えなきゃなあ。
09月20日 上弦の月を喰べる獅子(下)        夢枕獏     ハヤカワ文庫
 でね、結局情景というものがイメージされないんですこれ。いやそんなもん描写し喚起させる必要ない、って言われればそれまでなんですけどね。おそらくすごく気持ちが前に出て製作していたのだと思いますが、個人的にはどういった場所でいま物語が進んでいるかも合わせて読みたかった。まあ、とりあえず僕が夢枕獏として夢枕獏に今まで求めていたものはこの作品からはじぇんじぇん得られないわけですが、それでもこの作品、僕が読んだ夢枕獏の作品の中で一番面白かったです。
09月21日 女人源氏物語 第二巻           瀬戸内寂聴   集英社文庫
 いいなあ、光源氏って。不倫がばれて流滴されても、四十近くになってもジャニーズ事務所所属の若い男の子みたいにチヤホヤされて。羨ましいなあ。しかもチヤホヤする方の女の人も電波入りまくりにもかかわらずぜんぜん光源氏を困らせたりしないの。いやあとっても羨ましいお話なんですね源氏物語って。で、この本どうやら全五巻らしいのですが、わたくしの手元には二巻までしかありません。まるで二巻完結のようにセットで売っていた古本屋をわたくしは激しく恨んでおります。
09月27日 日米開戦(下)                 T・クランシー    新潮文庫
 すごいなあ、こんなに日本人のことわかるなんてえらいなあ。すごく取材とかしてるんだろうなあ。これよむと、ノビー落合の本が全て日本的な価値観に寄り添った右的な本のような気がしてしまいます。思わずトム・クランシーにメール出しそうになった。あんたええ仕事してるから会ったら飴あげる、って。でもせっかくだからやっぱだそーっと。
 でも、ラストの右翼的ハッピーエンドはいただけません。なんか折角トムさんのすばらしくフェアな価値観のバランスに喜んでたのにこれじゃ何か裏切られたような気になります。折角だからこれもメールにかいとこーっと。
09月30日 凡庸な芸術家の肖像 下          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
 いやすごいなあ蓮實っちいい仕事してはるなあ。妙にツボに入りまくりです。方法とか内容に関して。飴四個だね。で、何が一番凄いかかいつまんで言えば、こんだけヘタレた魅力ない人の物語をともすればバカっぽい方法を伴って製作するのに、徹底的に資料を検討しているのが凄いです。俺もバカやるために十年単位でお稽古積んでそれを元にお勉強する必要があるな、とつくづく思った。

成12年09月の順位
一等賞
09月02日 熊 他三篇                  フォークナー     岩波文庫
弐等賞
09月07日 文学部唯野教授               筒井康隆    岩波同時代ライブラリー
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09月18日 凡庸な芸術家の肖像 上          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
09月30日 凡庸な芸術家の肖像 下          蓮實重彦   ちくま学芸文庫
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