藝道日記。(平成 12/06/19)
平成十二年六月十九日(月)。

   
 寝てまう。六時起きる

 メールチェックし、八時前に家を出てチャリに乗り、港へ。デジカメ持ってきたので食堂でいつも食べている豚顔面肉ライム和えかけご飯を食おうと思うが今日に限ってない。仕方なく豚肉生姜炒め十六バーツを食う。
   


   
 運転手に入国管理局、と告げると運転手は合点だ、とばかりにデパートの名前を嬉しそうに言う。違うと言ってもう一度説明すると、いや行かない、と言う。なんでだ? と聞くと、好きじゃないから、と言われる。何じゃそりゃ。

 違うタクシーで着く。十二分遅れ。犬様見つかる。ごめんなさい三十バーツ以下のお昼ご飯奢りますから許して下さい、と言うと許してくれる。用紙に記入し写真を持って申請すると、この写真じゃダメだから、今撮ってこい、と言われる。どうやら髪型が問題らしい。食い下がるがはねつけられる。どうしても坊主頭じゃなければならないらしい。
   


 けして納得はいかないが、仏教国らしいと思う。

 仕方なくコンビニ前のATMで一〇〇バーツだけ引き出そうとしたら下ろせなかった。しかたなく五〇〇バーツ下ろし、安い白黒写真を撮影。戻って申請。申請しているとどうやら知っているらしい人の姿が視界に入ってきた。

 昔いろいろ仕事上でお世話になった人なので挨拶しておこうと思ったが、その人から連絡がなくなった頃から、人づてに私の悪口を流布していると言う噂を聞いた事を思い出した。その噂は私が製作している作品についてのもので、いやらしいものを作っているらしい、と言っているらしかった。藝人として作品を実際にご賞味いただいてそう言われるなら謙虚に受け止めるのだが、何も見ていないのにそう言っているとの話だった。   
 


   
 そういうことをする方はだいたい私を嫌ってて貶めようとしている方なので、向こうから話しかけてきたら昔の御礼を言おう、と思い椅子に座って本を読み始める。面白い本なのですぐにハマる。『くれない』読了。本を閉じて顔を上げると知人はいなくなっていた。私の姿に気づかなかったか、本当に嫌われているかのどちらだと思う。

 ビザ延長完了し旅券を受け取り、隣の郵便局に切手を見に行っていた犬と合流。じゃあ飯はカオマンガイやカオマンガイ奢ってくれ、と言うので店の方に歩き始めると、ちゃううちの近くじゃないといやや、と言われる。混んでいるバスを何台か乗り過ごしたあと、乗り合いトラックソンテウに乗り犬の近所へ。
   

  
 カオマンガイ食いながら、今年の九州芸術祭に出品する私の作品について、犬の意見を聞く。それによると、去年のより今年出品する予定の作品の方が格段に品質が高いそうだ。私は他のお客様からも同じようなご意見を多数いただいていた。

 あらそれは何よりなのだが、誰かがあれより面白いものを出品してきたり、選考委員がそう思わなかったらお金にならないので、それ以上あらそれは何よりなどという期待を持たないようにすることにするが、それも何か折角作ったものに対して失礼な気がしたので、結局、いつものように俺が獲って当然じゃん、と思ってすぐに出品したこと自体を忘れることにする。 
 


   
  そのままそこで犬は麺太汁蕎麦、私は細麺汁蕎麦を食う。容赦がないと言った感じの食いっぷりである。なぜそんなに食うのか理由はない。お互いにお互いのことなど関係なく止めようもない性衝動に近い食欲を感じたからだろうと思う。とにかく食う。それぞれ二十バーツ。私はアイスティー七バーツも蹴り込む。

 じゃあ帰るから、といってバスの番号を聞くと、犬に、なにゆうてんねんあんた私の家でいらんようになったテーブルと椅子とマガジンラック、持っていってくれるって昨日電話でゆうたやん、と言われ、ああそう言う話もあったなあ、と思い出す。今日ちょっと重いからまた今度、というと、犬はせめてマガジンラックだけでも持ってってくれ、と言うので結局、家まで連れていかれる。
   


椅子を背負ってみた。


そして回ってみた。
  
 タクシーでもって帰ればいいやん、と言う言葉に押し切られ、そして同時に予想外の証明写真代のために新たに引き出した五〇〇バーツのお釣りがあったために、その意見に同調してしまうが、ここから戻ればタクシー代一五〇バーツはかかるだろうと思い気分が重くなる。

 なんでかしらんが、大通りまで荷物を持ってくれた犬がいきなりトゥクトゥクを停め、値段交渉してみたら一二〇バーツで行くというのでトゥクトゥクで帰る。何か普段通ったことがない橋を通って川を渡ったが、タクシーとは違ったメーターを気にしないでいいので気分が楽。
 


   
 十三時九分うちに戻ってメールチェック。その後自転車を港に停めたままにしておいた事を思い出す。十八時半チャリ取りに港へ。めんどくさい。トゥクトゥクで港まで行ってもらえば良かったと後悔。

 葱二束五バーツ買ったら八百屋のおっちゃんが果物恵んでくれる。どうやらここの市場では私がケチだという噂が可哀想な貧乏人だという噂に変わりつつあるようだ。ネイチヴの方々に可愛がって頂くのは外人としていいことだとおもうので、有り難くゴチになる。

 御裁縫していたら犬から電話。メールチェック。
   


恵んで貰った。

   
 犬から貰ったものを開けるとカセットテープが入っていた。韓国歌謡、英語歌謡、ラテン歌謡など。全くもって一貫性がない。更に線香なども入っている。絶対にいらないものを何も考えず詰め込んだに違いない。

 永谷園のお茶漬けはは有り難いと思うが、杏仁豆腐セットは牛乳が高いこの国では多少辛いような気がするし、第一私は冷蔵庫を持っていない。冷蔵庫がないと作れないのだ。そもそも何で同じように冷蔵庫を持っていない犬がそんなものを持っているのかが謎である。
   


   
 あと、どうしても押しつけたかったらしいマガジンラックは、確かにどうしても押しつけたくなるほどウザい。部屋に置いているだけで蹴り倒したくなるようなふざけた形状なのだが、部分的に鋭利なつくりなので蹴ったら足を切りそうでそれもできない。しかし、ものが増えるのは有り難いのでとりあえず適当に詰め込んだ袋に入っていた煎餅を食いながら機嫌を直す。

 煎餅を食いながらカセットテープの中に日本人が書いたっぽい泰文字で金曜日、と書かれたテープを発見。てっきり泰歌謡が入っていると思い再生してみる。しかし、録音されていたのは、ざー、と言う音だけ。テープも日本製。わけわからん。煎餅はさすがに全部一気には食いきれず、オムレツ用にしようと思い、口をゴムで止め親の敵のように外部から衝撃を与えて粉々にする。
   


見るだけで腹が立つ。

   
 二十時からデータ整理。二十時四十九分飽きて御裁縫。

 御裁縫にはまりまくり、二十一時時三十四分からメールチェックしようと思ったら繋がらない。どうやらISPが混雑しているようだ。突然ラジオから流れてきた河村隆一の歌を聴きながらデータ整理再開。

 二十二時半終了。メールチェック。二十三時半寝る。

   

  
部屋に葱を生ける。
     

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